宗教にはさまざまな形態があるものですが、皆さんは「シャーマニズム」ってご存じですか?
語感からシャーマンという存在が関係していそうなことにはピンと来ると思います。
しかし、具体的にはどういう存在なのかは、よく分からないかもしれません。
じつは意外と日本人にも馴染み深い信仰の形態だったりするんですよ?
今回は、そんなシャーマニズムについてご紹介していきます!
シャーマニズムとは、どういうスタイルを言うの?
シャーマンが信仰の中心
その名が示すとおり、シャーマニズムを端的に説明すれば、シャーマン(祈祷師)を中心とした宗教のことを言います。
シャーマンの能力に大きく依存した宗教であり、明文化した儀式や教義を、聖書や神学の研究の結果に文書にまとめて、信仰のマニュアルとして用いているキリスト教などとは、大きく異なっています。
シャーマンの言葉が全て
シャーマニズムの中心であるシャーマンは、神との間で意思の疎通をはかり、信者や仲間の集団に対して、神の意思をお告げとして語ります。
シャーマンが神様と直接連絡を取り、諸問題への対策や指示をあおぐわけですね。
システムとしては優れている点とすれば、神様のお告げをリアルタイムで聞けるということでしょう。
問題点と言えば、シャーマン個人の能力への依存が大きいことかもしれません。
神様と連絡の取りにくいシャーマンでは、お告げの精度が低くなるかもしれないですね。
キリスト教などの契約宗教のように、あらかじめ用意されている神様とのあいだの約束事項だけを守ればいいわけではなく、その都度、神様に訊ねることになります。
シャーマニズムの2つの実行方法
魂がシャーマンから抜ける「脱魂」
シャーマンが神様と連絡を取る方法のひとつは脱魂です。
どういう方法かと言えば、シャーマンから魂や精神が抜け出した状態ですね。
肉体から離れたシャーマンの魂が、神様に会いに行くことになります。
そして、霊的な世界において神様と話し、いわゆる「お告げ」などをもらった後で、自分の体に戻ってくるわけですね。
あとは神様からもらったお告げの内容を信者や仲間などに話すことで、神様の意思を伝えるわけです。
意識の消失などが、「脱魂」のさいには生じます。
神様を体に下ろす「憑依」
神様をシャーマンの体に取りつかるのが「憑依」です。
神様に取りつかれたシャーマンは、神様の言葉を話すことになるわけです。
憑依状態にあるシャーマンから、周りの人々は神様のお告げを聞くことが可能となりますし、人々が直接、神様に質問をすることも出来ます。
「憑依」は人格の変遷を伴うことになり、シャーマンの人格は消えて、シャーマンの身体に取り憑いた神様の人格になるわけです。
どちらを重視するかは地域性が大きい?
シャーマニズムは世界のあちこちに存在しますが、「脱魂」か「憑依」の、どちらのスタイルをシャーマニズムが重視するかは土地によって異なるようです。
シベリアなど北東アジアの研究者は脱魂が中心だと考え、
東南アジアや南米の研究者は憑霊を重視しているようです。
日本や朝鮮半島の研究者は憑霊ないし折衷説を好む、つまりは、どっちもありという考えになります。
研究者の評価は三様に存在しているわけです。
対象となるシャーマニズムの様式によるのかもしれませんね。
シャーマニズムの宗教観
霊的なものが物質界より上位?
シャーマニズムの特徴としては、霊的な世界や存在を信じていることがあげられます。
それらが現実の世界に影響を及ぼすとされているわけです。
神様、悪霊、精霊、死霊、悪魔など現実の世界/物質界に強く関与しているという見方になります。
そのため、現実の問題の解決を、それらとコンタクトの取れる存在であるシャーマンに求めるわけです。
シャーマンの決め方は色々
- 世襲型 代々シャーマンの家系である。
- 修行型 シャーマンの技術や知識を修行して得る。
- 召命型 神様から選ばれる。
そういう三種類の選別により、シャーマンは決定されます。
召命型は、たとえば体の一部に独特なアザが浮かんだ場合や先天的な病気や、心身異常の病気などの、他の人とは異なる状態を持つことが資格とされるのです。
そのシャーマニズム文化における何かしらの兆候で選別されることになり、その条件は土地によります。
ほかの二種類に比べて、本人がシャーマンの義務を放棄することは難しそうですね。
ある種、生け贄に近いとも言えるかもしれません。
アニミズムとも共通する世界観を持っている
シャーマニズムは多神教的な性質と、人間以外の性質をもった神様や精霊などを崇拝したり、忌避したりしています。
自然の驚異を精霊などの擬人化することも多くあるわけです。
そういう考え方はアニミズムとも似通っている部分は多くあります。
シャーマニズムとアニミズムの違いとは?
アニミズムの考え方とは?
アニミズムの世界観では、自然界におけるあらゆる物質や、あるいは現象などに精霊などが宿っていると考えます。
どんな物質にもそれを代表するような精霊などが存在しており、それは人との暮らしに恩恵を与えたり害悪を成したりします。
自然界のあらゆるものに、人格や力があると考えている価値観です。
シャーマニズムとアニミズムの違い
アニミズムは世界観であり、シャーマニズムは信仰のスタイルと言えます。
アニミズム(自然のあらゆる場所に精霊がいる)の世界観において、精霊とコンタクトを取れるシャーマンが存在したとしても矛盾しません。
両者は、時には共存することも可能な考え方です。
アニミズムは自然界に数多の神格を感じ取ることであり、シャーマニズムはあくまでシャーマン中心の宗教の方式になるからです。
シャーマニズムのないアニミズム、アニミズムのないシャーマニズムも、論法としては矛盾しません。
シャーマンのいない自然崇拝者の集団があったとしても、自然崇拝者でないシャーマンがいたとしても、それらは変な話ではないのです。
シャーマンの種類
5種類のシャーマンの能力
シャーマンには一般的な人にはない、さまざまな能力があるとされます。
- 魂型 自分の体から魂のなって抜け出し、霊的な世界で神様と会ったり、何かしらの現象を起こす。「神様は××せよと仰っている」などのお告げ。
- 精霊統御者型 補助霊(力を持った精霊など)を使役して、必要な役割をこなす。たとえば人形に取り憑いた精霊を用いて、信者の悪運を取り除くなど。
- 霊媒型/憑依型 神様や精霊などを体に宿し、人格が変異する。取り憑いた神は一人称で語ることが多い。仲介者となり、信者と神のダイレクトな対話の場を提供することが可能。
- 予言者型/霊感型 シャーマンは神様や精霊と直接交信し、その意思を三人称で語る。シャーマンの個人的な性格や意思はある。「地震が起きると精霊は囁いている」など。
- 見者型 神様や精霊の姿が見え、或いは声が聞こえる。神様や精霊の意思を三人称で語る。「川の精霊が生け贄をよこせと言っている」など。
日本のシャーマン
日本にもシャーマン文化は存在しています。
青森のイタコは憑依型のシャーマンとして有名ですし、沖縄のユタは召命型かつ憑依型のシャーマンです。
古くからの民間信仰では、日本の各地に霊能力者的な祈祷師も存在したため、そういった人々もシャーマンと分類することは可能になります。
日本の新興宗教などでは、神様と話せるとか、特殊な能力があるとか、神様や霊魂などが見えるとか、シャーマン要素を持った教祖などが多いとも言われているのです。
卑弥呼もシャーマン
鬼道を用いたとされる古代日本の女王、卑弥呼もシャーマンと分類されています。
教典というガイドラインが残されていない東アジアの宗教で、とくにお告げなどの文化があるものは、シャーマニズムと分類されてもおかしくないのかもしれません。
まとめ
- シャーマン中心の宗教がシャーマニズムである
- シャーマンになる過程は3つある
- シャーマンの能力は5種類に分類される
- アニミズムは自然に神格を感じることである
- 日本にも色々なシャーマニズムが息づいている
キリスト教などの契約宗教のように、聖書などのガイドラインがある宗教に比べて、シャーマニズムはシャーマン個人への依存度が深いものです。
客観的な根拠の熟成には欠き、主観的な意見に見える危険性もあります。
そのため、洗練されていないとかインチキとか言われてしまうと、反論するロジックが少なく、原始的な宗教というレッテルを貼られることもあるわけです。
ガイドラインの研究の果てに生み出した、システムに依存しているようにも見える西洋由来の宗教とは、方向性が異なります。
しかし、直接的に神様と話せるのなら?
一生涯、神様の言葉を聞くことなく、神さまではなく人が大昔に記述した戒律などに対して盲目的に従うことになる西洋の宗教に比べると、ある意味では優れているのかもしれません。
両者の宗教観の信者は、お互いの宗教観に納得することが難しいかもしれないです。
お互いの弱点にばかり視線が向きそうですから。
人に宿った神の言葉を信じるのか、人が書いた神の言葉を信じるのか。
信仰のスタイルは、色々とあるわけで、好きなものを信じればよいのかもしれませんし、信じていないと宗教は機能しないのは確かです。
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