都市伝説は真偽や科学的な根拠の有無を問わず、人々の興味を集めるものです。
バミューダトライアングルも世界的に有名な都市伝説の一つであり、実在した海域を示す言葉になります。
バミューダトライアングルでは遭難を始め、多くの深刻かつ不思議な事故が起きたとされているのです。
今回は「魔の三角海域」とも呼ばれたバミューダトライアングルについてご紹介していきます。
バミューダトライアングルの特徴
バミューダトライアングルの場所
バミューダトライアングル(Bermuda Triangle)はどこにあるのでしょうか?
その場所はアメリカのフロリダ半島の先端と、大西洋にあるプエルトリコ、バミューダ諸島を結んだ三角形の海域のことです。
これらの海域の温度は年間を通して16℃~30℃前後になります。
温暖な気候になりますが太平洋上であるため波は高く、熱帯低気圧などを生み出し、ハリケーンなどの嵐や、濃い霧などが多発する海域です。
バミューダトライアングルでは事故が多発する?
バミューダトライアングルは航海・航空の主要なルートとして使用されています。
そのためバミューダトライアングルの「交通量」はそれなり多いものです。
この海域では過去100年のうちに1000人もの遭難・行方不明者が出た、多くの船や飛行機が消えたなどとされています。
事実として大型客船や軍用飛行機なども行方不明となっている海域であり、20世紀中には小さな漁船をふくめると、300隻以上の船舶が行方不明となっているのです。
このような事情から、バミューダトライアングルは「魔の三角海域」と呼ばれているのです。
クリストファー・コロンブスの方位磁石が狂った?
1492年の航海でバミューダトライアングルを経過したクリストファー・コロンブスは、船に積んである方位磁石が不思議な動きをしたと記しています。
古くからバミューダトライアングルには、不思議な現象と伝説がつきまとう海域ではあるのです。
バミューダトライアングルは魔の海域サルガッソーと一致する?
「サルガッソー」と呼ばれ中世の船乗りたちから恐れられた海域も、バミューダトライアングルは含んでいます。
このサルガッソーの特徴は海流がぶつかり合うことで相殺されてしまい、波に乗って船を動かすことが出来ないところです。
サルガッソーは多くの漂流物が浮かぶ場所になり、無人の漂流船の伝説や漂流船が流れ着いて生まれた「船の墓場」の伝説が誕生します。
またサルガッソーでは風や海流を頼りにしていた中世の帆船では航行不能に陥り、何日もその場所で待機を強いられたのです。
あまりにも動けないために海藻が船にこびりついて、動けなくなる=「ねばりつく海」という伝説が誕生します。
バミューダトライアングルは数百年来、船乗りたちに恐れられていた海域を含んでいるのです。
バミューダトライアングルでの遭難事件
バミューダトライアングルでは遭難事件が多発する?
バミューダトライアングルでは多くの遭難事件が起きていますが、その事件にはいくつかの特徴があります。
- 天候に恵まれていたのに(つまり良く晴れていたり風が強くもない日に)事故が起きる。
- コンパスや航行用の機械が唐突に壊れてしまう。
- 船や飛行機がレーダーなどから消えて、いきなり行方不明になる。
- 遭難した船や飛行機の残骸が見つからない。
バミューダトライアングルでは不思議なトラブルが多発する海域なのではないか、という都市伝説が存在しています。
もちろん科学的な根拠はなく、それらの多くは捏造された噂に過ぎません。
しかし、バミューダトライアングルの都市伝説の一部は「実際の事件」をモチーフにして作られています。
1881年エレン・オースティン号事件
1881年、エレン・オースティン号が洋上で無人の船と遭遇します。
その船は大きな破損がなく、不思議なことに船員だけが消えていたのです。
そこでエレン・オースティン号の船長はこの船を持ち帰ることにします。
部下の一部を乗せてその船を動かせるようにしたあとで、二つの船は出発しますが突然のスコールに遭遇し、気づけば二つの船は離れ離れになっていたのです。
二日後に両船は合流しますが、船には乗っているはずの部下の姿がなく無人の状態でした。
エレン・オースティン号の船長は部下を再びその船に乗せて、再び動き始めますが今度は霧に襲われて離れ離れとなります。
その後はエレン・オースティン号と謎の船は二度と遭遇することはなかったとされています。
まるで物語のようですが、実はエレン・オースティン号が遭遇したこの事件の実在については確認がされていません。
エレン・オースティン号の船籍を証明する書類もなければ、法律で義務付けられている死傷者リストも存在しないのです。
新聞でエレン・オースティン号について初めて触れられたと考えられているのは1906年6月であり、事件が起きたとされる時期から25年もあとになります。
エレン・オースティン号は作り話であるが……
出所不明であり根拠はありませんが、「かつてエレン・オースティン号という船でこんなことがあったらしい」という記事が新聞に書かれたことで広まっていったのです。
エレン・オースティン号は架空の物語と考えられていますが、その元ネタとなったとも考えられる事件が「メアリー・セレスト号事件」になります。
1872年にポルトガル沖に無人の船が突如として現れたのです。
この船には食料も水も積んであり、救難ボートが取り外されていたものの船は航行可能な状態で乗組員だけがいません。
船員たちにより、いきなり放棄されたかのようでした。
遭難事故を偽る詐欺説、海賊襲撃説など多くの説がありますが、今のところ最有力は積み荷である工業用アルコールの漏出に船長が危険を感じて避難したという説です。
乗組員たちは工業用アルコールの出火を恐れて、メアリー・セレスト号から緊急用のボートで離れたのち、そのまま遭難したと考えられています。
「謎の幽霊船」は当時の人々の関心を買い、さまざまな噂話が後付けされて行くことになったのです。
この都市伝説のバリエーションは多く、無人の船を発見したときに「食卓には温かいスープが残されていた」という初期の報告には全くない描写も増えていきます。
また船に乗っていた密航者であるという人物が数十年後に手記を出すなどの、さまざまな怪しげな話が増えていきましたが、いずれも確証を得られる情報はないのです。
このメアリー・セレスト号をモチーフにして、エレン・オースティン号の物語が作られたのかもしれません。
USSサイクロプス号の遭難【実在の事件】
1918年3月4日に出港したUSS=アメリカ海軍所属の船サイクロプス号でしたが、バミューダトライアングルを含む海域で消息不明となります。
第一次世界大戦の最中であったために敵対しているドイツ海軍に撃沈されたか、不意な嵐と遭遇して沈没したものと考えられているのです。
大型の輸送船であり、その乗員は306人もいましたが誰一人として消息不明のままであり、サイクロプスもいまだに発見されていません。
軍需用のマンガン鉱石11000トンを輸送する任務の最中であったことと、サイクロプス号の姉妹船に多数の欠陥が見つかっている事実が重視されています。
それらのリスクから嵐に遭遇すると「沈没しやすい状態」であったと考えられているのです。
またサイクロプスと同型・同年就航の姉妹船たちの二隻も、1941年の冬に行方不明になります。
プロテウスは11月25日にカリブ海のどこかでドイツの潜水艦による攻撃か、嵐によって沈没したようです。
ネレウスは12月10日に同じくドイツの潜水艦による攻撃か、嵐によって沈没したとされています。
姉妹船が三隻同じような海域で消失したことと、その原因が完全には特定されなかったことが都市伝説の誕生に貢献したのです。
姉妹船たちの消失はバミューダトライアングルの謎の力によるものだという説が生まれることになります。
1945年フライト19の失踪
訓練飛行隊であった「フライト19」は、教官であるテイラー中佐に率いられた5機の爆撃機と総勢14人の乗組員たちから作られたチームでした。
フライト19は1945年12月5日の午後に爆撃と、それなりの長距離に及ぶ航行訓練を実行します。
しかし彼らはそのまま行方不明となったのです。
この日の気候的なコンディションは万全ではないものの、通常から中程度の荒天であったとされています。
万全ではないものの、遭難するほどの嵐ではないとも言える天候だったのです。
彼らに何がどう起きたのかは、フライト19の残骸を現在も回収できていないため謎のままですが、事件の調査報告は出されています。
フライト19の事故の調査結果
実は同じ時間帯に訓練していた別のチームがあり、彼らは無線でフライト19と考えられる人々と交信しています。
「どこを飛んでいるのかが分からない状態である」というフライト19のメンバーに、別の訓練チームのリーダーがアドバイスを送った記録が残っているのです。
陸に戻るように太陽を追いかけて西へ向かうか、当時は最新式の装備であるレーダーがあればオンにしろと伝えました。
しかし、そのときかなり離れていたのか無線は途切れがちになります。
フライト19側からは「東に飛びすぎてしまったかもしれないから、西に向かいたい」、「ターンに失敗して方角を大きく間違えた可能性がある」などの通信が届いているのです。
アメリカ軍は最終的にこの事件の原因は訓練生だらけのフライト19を率いたテイラー中佐の飛行機のコンパスが壊れ、方角が分からない状態で訓練を続けていたことにあると予測しています。
テイラー中佐は故障に気づくよりも先に、いくつかの「想定された場所」に「酷似した場所」で空爆の演習を行ったようです。
訓練用の爆弾投下の許可を問う無線が記録されています。
テイラー中佐はほとんど海しかない空間を、間違ったコンパスを頼りに長い時間、確信を持って行動を続けてしまったのです。
バミューダトライアングルでのフライト19の予測される行動
当時は目視でも場所を把握するため、海上に目的地とよく似た島の並びが見えれば、そこを目的地と誤認することもあったのです。
コンパスの故障に気づかずに、コンパスを信じて演習は続けられてしまい、おそらく陸地からかなり東の大西洋のまっただ中へ進んでしまったと考えられています。
故障に気づいた後、テイラー中佐は西に向けて進路を変えるため左にターンしたはずですが、実際は西ではなく北に近い角度であったのかもしれません。
もしそうであれば、そのまま飛行を続けても、かえって陸地から遠ざかってしまいます。
さらには無線が途切れる程度には悪天候であり、燃料も余裕はありませんでした。
フライト19は「誰かの機体が燃料が尽きたら、見捨てられない。全員で海に降りる」とも告げています。
燃料切れが起きたのか、パニックになったのか、大西洋上のどこかに最終的には墜落したのかもしれません。
あるいは燃料切れから着水したものの、悪天候であったため捜索隊に見つけられまで耐えきれずに転覆したのではないかと考えられています。
バミューダトライアングル名物の後付け設定がたくさん出て来る
軍の正式な調査報告は上記の通りです。
しかし、フライト19が無線で「白く光る海」を見たと報告したとか「火星に向かって飛んだ」などのミステリアスな何かが起きたという設定が次々に生まれていきます。
それらは後付けされた設定に過ぎません。
架空の情報を新聞や雑誌のライターやテレビ番組などのディレクターたちが創作していったものです。
「バミューダトライアングルで起きた不思議な事件」は、人々の好奇心をくすぐる話題性のある物語だったのです。
このフライト19に限らず、バミューダトライアングルで発生した多くの事件にはさまざまな後付けの創作がつけられ、都市伝説としての話題性を強められています。
バミューダトライアングルでの事件が多い原因は?
バミューダトライアングルの都市伝説的な事故原因
どうしてこの海域では事故が多発すると言われているのでしょうか?
バミューダトライアングルには事故が起きやすい原因があるのではないかと、多くの科学者たちが謎を解こうと努力しています。
それでもバミューダトライアングルにある「事故が多い原因」を特定することはいまだに出来てはいません。
しかし、いくつかの説が科学者たちから提唱されています。
地磁気が狂いやすい説?
コロンブスの報告からもあるように、この海域では方位磁石が狂ったというトラブルが報告されています。
方位磁石が狂うことは特別なイベントなのでしょうか?
じつはそうではありません。
地球の内部・外部の影響を受けることで地磁気はよく変わります。
地球の内部の原因としては火山活動などが活性化した場合であり、地球外部の影響とは太陽から吹いてくるエネルギーが一時的に強まることでも地磁気は乱れるのです。
これらの影響は予測することは難しいものの、500年以上前から瞬間的に方位磁石が狂うことそのものは船乗りたちに常識として知られていました。
バミューダトライアングルでは地磁気が狂いやすいのではないか?という説もあります。
なおその説を裏付けるに値するほどの科学的な根拠は見つかってはいません。
メタンハイドレート説
バミューダトライアングルの海底に眠っている資源の一つ、メタンハイドレートが海底から噴出して水中で気体化するという説です。
それが起きれば水中に大量の泡が発生するため、その泡の上を通過している船がいれば、瞬く間に沈没してしまいます。
このためバミューダトライアングルで起きる事件の「特徴」の一つである、とつぜん船が消えて、残骸も見つからないという結果を支持する説です。
理論としては正しいものであり、その危険性は全く考えられないとは言い切れないものになります。
ただし、アメリカの地質学協会の意見としては、バミューダトライアングルのある海域におけるメタンハイドレートの層はこの1万5000年間は大いに安定しているのです。
宇宙人に誘拐された説
かなり乱暴な説になりますが、バミューダトライアングルでの事故には宇宙人が関わっているという説もあります。
当然ながら今のところ宇宙人の存在は地球上では未確認なため、彼らの犯行なのかどうかも未確認です。
未知のエネルギー地帯である説
一部の主張によれば地球にはいくつかの特別な力場があるそうです。
バミューダトライアングルもその力場に含まれていて、この場所では特別な現象が起きやすいのだという説になります。
科学的な根拠は全くありません。
バミューダトライアングルの真実?
じつはバミューダトライアングルでの事故発生の確率は普通
バミューダトライアングルでの事故は「多く」報告されていますが、事故発生の割合で見ればその他の海域と大差はありません。
この海域そのものが海と空の航路として昔から重宝されてきた場所であるため、「交通量」が多いのです。
都会の道路で田舎道の3倍の事故が起きたとしても、不思議ではありません。
通過する船や飛行機が多い海域であるからこそ、事故の件数も自然と増加します。
バミューダトライアングルの事故発生率は高くなく、一般的な範囲です。
バミューダトライアングルを通過する船や飛行機に大して保険の加入金が特別に割高になるようなことも起きてはいません。
バミューダトライアングルの事件でないケースも報告されがち
バミューダトライアングルで実際に起きていない事件も捏造され、真実であるかのように報告されることもあります。
作家からすれば書きやすい題材であり、何より一般受けが良いのです。
バミューダトライアングルでの神秘的な記事は、メディアにとっても新聞や雑誌、視聴率や書籍の売り上げを増やすことにつながります。
そのためメディアも真実を精査することには消極的な時期が長く、産業化されたオカルトの一つとしてバミューダトライアングルは使用されてきたのです。
バミューダトライアングルでの事故は嘘と水増しが多い
バミューダトライアングルは熱帯性低気圧が発生するリスクのある外海です。
そのため「何月何日に到着する予定の飛行機・船が予定の日から四日も経っても着かなかった」という事実は多発します。
海や空が荒れたため到着の日数が数日から数週間遅れることもあり、上記の事件には「五日目に到着した」という解決が起きていたものもあるのです。
つまりよくある運航上のトラブルなだけですが、「五日目に到着した」ことをあえて書かなければ嘘にはならず、あたかも永遠に到着しなかったように書けます。
もしくは「大嵐の日にいきなり連絡が取れなくなり遭難したようだ」という事実があれば、「大嵐」ではなく「ある日いきなり連絡が取れなくなり遭難したようだ」に書き換えたのです。
事実の一部を削るか、あえて報告しないことにより、「魅力的な物語」に書き換えることが可能になります。
なおリアルタイムの事件ではなく、数年から数十年前の事件を脚色して使うことで、現実に被害を与えることを避けられます。
バミューダトライアングルの元ネタとなった新聞記事のいくつかは、そういった手法が見られるものです。
バミューダトライアングルの都市伝説は、実際に起きた事実を歪め、脚色することで作り上げていったものになります。
バミューダトライアングルの謎の事件のほとんどは科学的な解決が可能
この海域で起きた実際の事件のほとんどは、科学的に説明がつくものと考えられています。
多くが突発的な嵐などを受けての遭難であるか、計器の故障や読み間違えで起きた遭難です。
もちろん完全に創作された事件である場合は解決はできません。
あるいはフライト19のように、物的証拠が少なすぎる事件も完全な解明はされてはいませんが、計器の故障によるものであれば起こりえると説明できる事件です。
バミューダトライアングルには不思議な事件は実際には起きていないとも言えます。
しかし、都市伝説の上では実在する事件かどうかも関係ありません。
娯楽として消費するに足る面白い事件であれば、真偽や科学的な根拠は必要ないのです。
まとめ
- バミューダトライアングルは大西洋にあり、熱帯低気圧が多く発生する
- バミューダトライアングルでは事故が多発する
- 実在した事件もあれば、捏造された事件もある
- バミューダトライアングルでの事件の発生割合は実は普通である
- バミューダトライアングルで起きる事件の原因には地磁気説、メタンハイドレート説、宇宙人誘拐説などがある
バミューダトライアングルの謎の事件の多くは商業的な動機にもとづいたものなのかもしれません。
あるいは宇宙人や未知のパワーが関与しているの可能性もゼロとは言えないものです。
真実は科学的な証拠だけでは見つからないかもしれません。
海にまつわる神秘的な謎や、恐怖を感じさせる事件などへの好奇心が、バミューダトライアングルという魅力的なアイコンは受け皿になっているようにも思えます。
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