ナトロン湖とは?石化やフラミンゴ、湖を取り巻く問題を解説

美しく見える自然環境が有毒なこともあります。

アフリカにあるナトロン湖は美しいとも呼べる特殊な外観をしていますが、多くの生物に危険です。

塩分が多く高温になる危険な水にあふれ、動物を石化することまであります。

しかしフラミンゴにとっては主要な繁殖地として機能しているのです。

今回はフラミンゴにとっての楽園、ナトロン湖について解説していきます。

ナトロン湖の概要

ナトロン湖はアフリカのタンザニアにある

ナトロン湖はどんな場所にあるのでしょうか?

アフリカを縦に走る巨大な溝、大地溝帯(グレート・リフト・バレー)の谷底部分にある湖の一つになります。

タンザニアに位置しているこの湖の標高は610メートルですが、周囲よりも低いためミネラルを多く含んだ水が流れ込んできます。

この土地は年中高温であり気温は40度を軽く超えているのです。

ナトロン湖に流れ込んできたミネラル分を多く含む水は、この高温のために蒸発していき、ミネラル分の濃い湖が残ります。

また地下からソーダ(炭酸ナトリウムを多く含む水)が湧いており、その水質はヌルヌルとしているのです。

ナトロン湖の見た目は「炎の湖」「死の湖」

ナトロン湖は時期によってその姿形を大きく変える湖です。

谷底に位置するこの湖は降水量次第では大量の水が集まり、その広さは拡大していきます。

逆に雨が降らない時期になれば、流れ込む水は減少するために小さくなるわけです。

ナトロン湖の水は周囲の土壌から流れ込んだ塩分が非常に多く溶けています。

いわゆる塩湖であり、水が少ない時期では塩分がさらに濃くなり多くの生物にとって生存に適しません。

しかし藍藻類(細菌に近い生物です)の一部にとっては、この環境は好ましいものです。

雨水が少ない時期に上昇した塩分濃度でのみ一部の藍藻類が異常に繁殖していきます。

この藍藻類たちの色である赤に湖は染まるほどです。

湖面に結晶化する塩類がこれを含めばピンク色になり、地表は赤と土の色が混じりオレンジにもなります。

時期により藍藻類と水分の量が変動して、その色と形は大きく変化していくのがナトロン湖の特徴なのです。

ナトロン湖では動物が石化する

(出典:Nick Brandt)
(出典:Nick Brandt)

ナトロン湖では塩漬けになった動物が石化します。

いわゆるエジプトのミイラと同じように、塩分をはじめ多くのミネラルが動物たちの死体から水分を奪い取り乾燥させていくわけです。

また表面に張り付いた塩類は死体を白い結晶で覆うことで固めてしまいます。

その結果として、まるで石化したかのように動物たちの死体は変化するのです。

ナトロン湖に動物たちが「間違って」接触してしまうと、60度を超えることもある水温と極度の塩分にダメージを負わされ、そのまま死亡することがあります。

そういった動物の死体たちはミネラルの影響で石化していくわけです。

ナトロン湖の湖岸には石化した動物が流れ着いています。

ナトロン湖とフラミンゴ

フラミンゴはナトロン湖に適応している

フラミンゴはオオフラミンゴとコフラミンゴの二種類がいますが、アフリカのコフラミンゴにとってはナトロン湖はほとんど唯一の繁殖地です。

またオオフラミンゴにとってもナトロン湖は有力な生息地になります。

二つの種類のフラミンゴたちにとって、高温で有害なナトロン湖は他の動物を寄せ付けないでくれる住み心地のよい場所なのです。

この場所でアフリカのフラミンゴは土を盛った巣を作り、卵を生み落とすことになります。

フラミンゴの体がピンク色である秘密

フラミンゴの体は鮮やかなピンク色をしています。

しかしこの色はフラミンゴ自身に由来する色ではありません。

フラミンゴのピンク色はエサにしている藍藻類の赤い色が、フラミンゴ本来の白い羽に混ざり合うことで作られています。

フラミンゴにとってナトロン湖は敵から身を守ってくれる家であるだけでなく、たくさんの藍藻類を食べることが可能な狩場でもあるのです。

なお摂取する藍藻類が少なかったときには、フラミンゴのピンク色は色あせてしまい、灰色がかったような色合いに変化します。

日本などの動物園では、そういった色素が含有されたエサを与えられているのです。

ナトロン湖の魚

ナトロン湖に生息する「オレオクロミス・アルカリクス」
(出典:wikipedia

ナトロン湖には魚が住んでいる

ナトロン湖の有害な水のなかには一種類(近縁種を含むと三種類)の魚が生息しています。

オレオクロミス・アルカリクスという魚です。

ナトロン湖の塩分濃度と水温が低い場所を選ぶようにして、この魚は暮らしています。

サイズは最大でも11センチほどの小魚であり、ナトロン湖をはじめ大地溝帯に複数存在する塩湖の固有種です。

水温が高い場所や干上がりすぎたときには、さすがのオレオクロミス・アルカリクスも死亡します。

ナトロン湖の生態系は特殊である

ナトロン湖はphは9や10にも達することになる強アルカリ性で、これは多くの生物にはとても有害なレベルです。

しかし、フラミンゴや藍藻類、オレオクロミス・アルカリクスなどが暮らす特別な塩湖になります。

またナトロン湖の周辺には、ヌー、シマウマ、キリン、アフリカゾウ、クロサイ、アフリカゾウ、インパラ、ガゼルなどの多くの草食動物も暮らしているのです。

ナトロン湖の織りなす生態系はとても特殊であり、貴重なものとして湿地帯を保護するラムサール条約に加入しています。

ただ乾燥しやすいナトロン湖は徐々にその範囲を狭めており、最終的には湖ではなくなり草原に戻ると予測されているのです。

ナトロン湖の開発計画

ナトロン湖の資源の利用:古代エジプト

古代エジプトは「ナトロン」という天然の素材を使っていました。

ナトロンは炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムと各種塩類の化合物です。

アフリカの塩湖の底から採取することができるこの物質は、水を吸い取る性質があり、強いアルカリ性から殺菌性があります。

古代エジプトではこのナトロンをミイラ作りのための塩として使っていたのです。

またナトロンは石鹸や洗剤の代わり、さらには肉や魚の防腐剤としても古代エジプトで使用されています。

古代エジプトでは「エジプシャンブルー」と呼ばれる人類最古の顔料がありました。

ナトロン、孔雀石、石英を混ぜることで、この美しい青を作れたのです。

古代エジプトでは貴重な川の水や神々がいる天空の色である青は珍重され、神聖視された色の一つになります。

使用は紀元前3000年前からです。

つまり5000年前からナトロンは人類の生活に関わって来たナトリウムになります。

近年の問題

アフリカの大地溝帯にも開発の波が及んでいます。

ナトロン湖についても水源である林の伐採や、水力発電用のダム建設により川の流れが変わってきているのです。

かつてと全く同じとは言えない状況になっており、ナトロン湖は干上がる危険が増えています。

またナトロン湖自体の開発も始まろうとしているのです。

ナトロン湖の炭酸ナトリウムは貴重な資源となり、精製すれば工業資源として売却することが可能になります。

ナトロン湖の近くに工場を作り、1000人規模の労働者用の住居や、電源として火力発電所を建てることも計画されているのです。

他にはナトロン湖に対してエビを放ち養殖しようという計画まであります。

ナトロン湖は開発の危機に晒されているのが現状です。

ナトロン湖が開発されればフラミンゴは?

コフラミンゴにとっては唯一の繁殖地であるため、もしもナトロン湖の開発が本格化すれば、コフラミンゴは絶滅の危機にされされます。

オオフラミンゴにとっても有力な居住地が消えることから、その個体数を大きく減らすような結果となると予測されているのです。

貴重な自然が失われてしまうかもしれません。

しかしアフリカの工業化が進むことは、そこに住むアフリカの人々に利益をもたらすことにもなります。

環境保護と工業化の恩恵の対立は、アフリカにとっては議論の予知がある分野です。

まとめ

  • ナトロン湖はアフリカのタンザニアにある
  • 時期により水量や形状、色合いまで変わる
  • ナトロン湖の水は強いアルカリ性で、動物には有害で石化する
  • 適応したのはフラミンゴと一部の魚だけ
  • ナトロン湖に発生する藍藻類がフラミンゴの色のもと
  • ナトリウム類は古代エジプトでミイラ作りや洗剤、防腐剤として使われる
  • ナトロン湖は近年開発の危険にさらされている

ナトロン湖は消え去る運命ではありますが、人間の介入によりその消失は加速するかもしれません。

赤にオレンジ、ときおり無色にもなる不思議な塩湖ですが、経済的な発展の動力として消費されるかもしれないのです。

フラミンゴたちの貴重な生息地を守って欲しい気もしますが、開発により多くの人々に雇用も生まれます。

自然保護と経済の追及は、果たしてどちらが正しいことなのかは人によって答えが違うかもしれません。

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