チャガン湖とは?放射能によって汚染された核の湖

チャガン湖

旧ソ連を構成する国の一つだったカザフスタン。草原地帯が国土の大半を占めるこの国の面積は世界第9位と広大です。その北東部にあるのがチャガン湖です。

核実験によってできたチャガン湖は「核の湖」の異名を持ちます。チャガン湖周辺では今も高い濃度の放射能が検出されています。

今回は、チャガン湖誕生の歴史や測定された放射能、チャガン湖の生物やチャガン湖を含むセミパラチンスク核実験場の今についてまとめます。

チャガン湖の位置・概要

カザフスタン共和国の北東部に位置する東カザフスタン州セメイは、かつてセミパラチンスクとよばれた都市です。1997年まではセミパラチンスク州の州都であり、東カザフスタン州となってからも同州有数の都市です。

そのセメイの南西にある草原地帯にあるのがチャガン湖です。チャガン湖は1965年1月15日のチャガン核実験で出来た人造湖

チャガン核実験で出来た直径はおよそ408m、深さ100mの穴に、春の雪解け水などが流れ込むことによってチャガン湖が形成されました。

チャガン湖誕生の歴史

米ソの核兵器開発競争

チャガン湖誕生の背景には、米ソによる核兵器開発競争の激化があります。

1950年代、米ソは核兵器の性能を上げるため、核実験を繰り返しました。1954年に行われたビキニ環礁水爆実験はその代表です。この水爆実験では第五福竜丸の被ばくが話題となり、ビキニ環礁付近で漁獲された冷凍マグロは“原爆マグロ”とよばれ、すべて廃棄されました。

さらに、この年には放射能を含んだ雨が日本でも観測され、放射能汚染の可能性に日本中が恐れを抱きました。1963年に部分的核実験禁止条約が締結されるまで、両国は地上や海上での核実験を繰り返します。

平和的核爆発の動き

チャガン核実験
チャガン核実験
(https://en.wikipedia.org/wiki/Chagan_(nuclear_test))

1960年代から70年代にかけて、核爆発を土木の分野で活用しようという研究がなされました。核爆発を用いれば、ダイナマイトなどよりも大きな爆発を起こし、障害物を破壊することができるからです。

こうした核爆発の利用を平和的核爆発といいます。アメリカではネバダ核実験場などで実行されましたが、放射能汚染などの問題を踏まえ、計画がとん挫します。

一方、ソ連では平和的核爆発の一環としてチャガン核実験が行われました。ソ連政府は、カザフスタンの乾燥地帯に40個以上の人工湖を作ろうと計画していました。しかし、この平和的核実験も1996年の包括的核実験禁止条約によって禁止されます。

チャガン核実験

核実験を行うにあたり、イルティシ川の支流にあたるチャガン川の周辺の干上がった川底が実験場所として選ばれました。この場所がえらばれた理由は、核実験で生じたクレーターに雪解け水が集まり、湖となることを期待したからです。

実験にあたり、科学者たちは約180メートルの井戸を掘り、そこに140キロトンの核爆弾を設置しました。1965年1月15日、核実験が行われます。爆発の結果、1030万トンもの土が高度930メートル以上まで吹き飛ばされます。

爆発後、直径408メートル、深さ100メートルに及ぶクレーターが出来上がりました。クレーターのふちは盛り上がり、まるでカルデラ湖の外輪山のようになっています。春になると、期待された通りクレーターに水がたまり、湖が出現しました。これが、チャガン湖のはじまりです。

チャガン湖で測定された放射能

チャガン湖で放射能測定
(https://www.quora.com/Is-it-safe-to-swim-in-Atomic-Lake)

チャガン湖を作るための核実験は、湖を作ることを意図していました。地上に大きなクレーターを発生させるには地表近くで核爆発を起こす必要があります。そのため、通常よりもかなり浅い地下で核爆発を発生させました。核爆発が地表に近ければ、それだけ放射性物質が地表付近や大気中に放出される可能性が高まります。

カザフスタン政府はチャガン湖周辺を「特に核実験の影響を受ける地域」に指定しています。チャガン湖の水は放射線によって汚染され、引用はおろか、泳ぐこともできません。もちろん、周辺に生物は見出せません。

2009年6月23日にNHKが放送した「セミパラチンスク 18年後の現実~カザフスタン核実験場跡~」では、「実験場周辺では、今なお正常値の10倍の放射線が検出」しているとしています(http://www6.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/?pid=090622)。

場所や測定対象によって違いがあるのかもしれませんが、強い放射線によって汚染されているのは確かです。たとえば、核実験場に放出された物質の一つで毒性が強いとされるプルトニウムは半減期が長く、長期間にわたり残留するため周辺に強い影響を与えます。

すくなくとも、そうした物質が含まれる核実験場内の土で育てられた作物を口にするのはやめた方がよいでしょう。

チャガン湖の生物

1966年に軍や関係者がチャガン湖周辺を去ると、生物学者たちが放射線が生物に与える影響を調べる場としてチャガン湖を利用します。

チャガン核実験後、残留放射能が生物に及ぼす影響を調べるため。生物学者たちはピラニアを含む36種類の魚や27種の軟体動物、42種の無脊椎動物、32種の両生類、8種の哺乳類、11種の爬虫類、藻類などを中心とした150種の植物を核爆発でできたチャガン湖に持ち込みました。

しかし、持ち込まれた生き物の9割が死滅してしまいます。中には、突然変異が見られた生物も見つかりました。

よく知られているのが体重34キログラムの淡水生巨大ザリガニです。他には、本来草食性のはずが肉食性となったコイがいます。肉食性となった理由はわかりませんが、チャガン湖のコイは1メートルを超える大きさまで成長するものもいたとされます。

しかし、作物同様、これらの生物を口にするのもお勧めできません(https://ja.hoboetc.com/novosti-i-obschestvo/23513-atomnoe-ozero-chagan-kazahstan-opisanie-istoriya-i-interesnye-fakty.html)。水中の残留放射能が蓄積している可能性があるからです。

セミパラチンスク核実験場の今

セミパラチンスク核実験場
セミパラチンスク核実験場
(https://caravanistan.com/tour/semipalatinsk-test-site/)

チャガン湖を含むセミパラチンスク核実験場では1949年からの40年間で合計456回の核実験が繰り返されました。核実験場は1991年に閉鎖され、跡地はカザフスタン政府の所有となっています。

核実験場が閉鎖されてから、施設内に立ち入る盗難者があとを絶ちませんでした。彼らの目的はケーブルや金属製の測定器です。こうした侵入を防ぐため、閉鎖後も残っていた作業員がブルドーザーで核実験場の入り口をすべてふさぎました。2001年段階では、数名の監視員がいるだけでした(https://www.hiroshimapeacemedia.jp/abom/nuclear_age/former_soviet/011111.html)。

ソ連の後継国家であるロシアの領土外にある唯一の核実験場であるため、他国が旧ソ連核実験の実態を調査できる貴重な場となっています。核実験場の閉鎖後、周辺住民におこなった健康調査では、実験場から降り注ぐ放射性物質の影響で20万人以上が健康被害を受けていたことが判明しました。

チャガン湖はNetflixでも取り上げられた

Netflixの『世界の“現実”旅行』に出てくるチャガン湖
チャガン湖を泳ぐデヴィッド・ファリアーら

Neflixのドキュメンタリーシリーズ『世界の“現実”旅行』(原題:Dark Tourist)でもチャガン湖が取り上げられたことがあります。

このドキュメンタリーではジャーナリストのデヴィッド・ファリアーが世界各地の不気味な観光地を巡るシリーズです。

監督はカザフスタン現地でガイドを雇ってチャガン湖を訪問します。水面なら放射能の影響が少ないだろうという謎の理屈で、実際に泳いだり、湖で取れた魚を食べたりしていました。

まとめ

チャガン湖は1965年のチャガン核実験によって生み出された人造湖です。もともと、チャガン核実験は平和的核実験の一環として企図されたものでした。

しかし、放射性物質を大量にまき散らす核爆発では、住民が農業などに利用する湖を作ることはできませんでした。現在の残留放射線量については、軍関係者がチャガン湖を去った後、放射線が生物に与える影響を調べるため、生物学者が多数の生き物を湖に放ちます。

大半は死滅しましましたが、巨大ザリガニや肉食性のコイなどが生き残りました。チャガン湖を含むセミパラチンスク核実験場は1991年に閉鎖されましたが、今なお、高濃度の放射能によって汚染されています。

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