ピグミーとは?体が小さい理由や、アフリカ・アジアのピグミーまで解説

世界には、ピグミーと呼ばれる少数部族が存在しています。

その外見的な特徴は、低身長であることになります。

ピグミーの語源は、妖精小人なのです。

今回は、そんな小柄な部族であるピグミーについて、ご紹介いたします。

体が小さい理由についても、近年の研究結果などを踏まえて解説していきます。

ピグミーと呼ばれる人々

ピグミーという言葉が指す部族

ピグミーという言葉は小柄な部族の人々に対して、一般的に用いられた言葉になり、じつは特定の部族を指す言葉ではないのです。

集団を形成するメンバーの全体が小柄な部族であれば「ピグミー」と呼ばれることがあります。

アフリカの小柄な部族は「ネグリロ」、アジアの小柄な部族を「ネグリト」と呼んでいます。

どちらの言葉も、「小さな黒人」の意味になるのです。

また、ピグミーは差別用語としても受け取られることがあるため、使用には注意が必要となります。

ピグミーと呼ばれる部族は、ピグミーを自称しているわけではないのです。

なお、アフリカとアジアのピグミーの間には遺伝的なつながりはないのです。

ただの外見的な特徴を指す言葉であるのが、ピグミーとなります。

アフリカのピグミー(ネグリロ)

カメルーンやコンゴにいるバカ族(出典:Middle Africa)
アフリカのピグミー
  • トゥワ族:ルワンダ、コンゴなどに住む部族。ルワンダの虐殺でも多く殺されたとされます。
  • ムブティ族:コンゴにいる部族。森を神聖視する独自のアニミズムを持ち、森を信仰することで加護を得たり、厄除けを行います。
  • アカ族:中央アフリカ共和国、コンゴなどにいる部族。バカ族と隣接して暮らし、共通の祖先を持つ可能性がありますが、言語が異なります。
  • バカ族:カメルーン、コンゴなどに住みます。隣接する農耕系部族と親しく、混血も進んでいます。カメルーン政府の方針に反して、学校教育を拒んでおり、独自の医術体系を持ちます。
  • バキエリ族:カメルーンに住み、バカ族と共に西ピグミーと呼ばれています。
  • バボンゴ:ガボンに住み、西ピグミーの一員。なお、西ピグミーはバカ族にひとくくりにされることもあります。

アフリカのピグミー(ネグリロ)の共通項

文化や言語など、それぞれに異なるものを持っているアフリカのピグミーですが、共通項を持ちます。

アフリカの熱帯雨林に居住するということと、狩猟採集生活を行うことです。

そして、小規模集団で生活する少数民族であり、経済的および政治的に弱い立場であることも多くあります。

また、森林生活を営む部族に共通するリスクとして、平野部などに比べて、感染症などが伝染して広がっていくスピードの速さがあります。

アフリカのピグミーが小さい理由:遺伝子説

かつてはピグミーには思春期における成長期が来ないため、子供のような体格になると考えられていたのですが、それは間違いだと判明しています。

アフリカのピグミー族の体格は、部族によって生誕時~数ヶ月の乳児の時点で、ピグミー以外の部族とのあいだに体格の差が発生しています。

その差の原因は、成長ホルモン受容体および骨形成に関わる遺伝子の変異とされているのです。

成長ホルモンはその名のとおり、成長を司るホルモン(生体内に分泌する一定の役割を持った化学物質)であり、その受容体(ホルモンを受け入れて、その作用を生物に行うための「入り口」)の数が少ない、または受け入れにくさがあれば、体の成長は遅れます。

骨形成とは、骨を作るためのシステムであり、これが悪ければ手足などの長い骨の伸びが特徴的に悪くなります。

結果として、アフリカ・ピグミーの典型的な姿である、150センチほどの低身長であり、手足は短く胴体は太い、という特徴が発生することになるのです。

またアフリカ・ピグミーの諸部族のあいだに起きている、これらの遺伝子的な変異は、それぞれに差異があり、固有の成長スピードを持っています。

西ピグミーでは、他の人種と同じサイズの赤ちゃんが生まれ、その成長スピードは生後3ヶ月で遅くなり始めますが、東側のピグミーでは、そもそも生まれたサイズが小さく、最終的にも小さな身長になります。

遺伝子の変異が創出する低身長のシステムが、両者のあいだでは、そもそも異なっているのです。

つまり、共通の遺伝子がそれぞれのアフリカ・ピグミーたちに受け継がれたものではなく、「各地の集団で似たような変異が起きただけ」という結論が出ています。

アフリカ・ピグミーの諸部族には、「共通の先祖がいない」可能性があるという意味になるのです。

アフリカのピグミーが小さい理由:環境的な要因

ピグミー族の暮らしは、狩猟採集生活という不安定な栄養学的環境に置かれています。

そして、じつのところピグミー族の周辺の部族も低身長の部族がいることがあるのです。

あるピグミー族が155センチの平均身長なら、その周辺部族は165センチという場合もあります。

基本的に森林生活者の栄養環境は悪く、成長が阻害されやすい環境といえるのです。

そして、栄養環境が悪いだけでなく、森林のなかは障害物が多いため、小柄な者のほうが低コストかつ低抵抗で動けることになります。

また暑い土地においては、小柄な方が熱が体内から逃げやすくなるため、体温調節で有利にも働くのです。

小柄なピグミー族は、熱帯雨林という環境においては、動きやすさ省エネというサバイバル能力に長けているという利点があります。

アフリカのピグミーが小さい理由:収斂進化(しゅうれんしんか)

遺伝子的につながりがないのに、どうして同じような姿となったのか、という問いの答えには、収斂進化があげられています。

これは魚類であるサメと、ほ乳類であるシャチが似たような姿をしていることが把握しやすい概念のひとつです。

同じような環境下で、それぞれ異なるルーツを持つ集団がいたとしても、数十・数百世代を重ねて遺伝子の変化が蓄積した結果、同じような姿をした形に行き着く、という考え方が「収斂進化」になります。

アフリカの熱帯雨林において、狩猟採集生活者は、ピグミーというサイズであれば生き残りに適していたわけです。

その結果、各部族におけるピグミー・サイズの遺伝子保持者の遺伝子は有利に働き、その子孫の数が増えていき、少数部族であるピグミーたちのなかで小柄になる遺伝子は確立したということになります。

環境の淘汰圧における、人類の遺伝的な対応力の勝利が、ピグミーという進化であった可能性があるのです。

アフリカのピグミー研究の困難なポイント

基礎情報が少なすぎることが、これらの研究を難しくしています。

狩猟採集を行う部族の多くに共通していることが、自分の年齢を把握していないことです。

年金制度や学校もないため、年齢を数えるという行いに関心がなく、さらには定住しない者も多いために人口数も把握することが困難になります。

また民族紛争の多発するアフリカのような土地においては、少数集団の人権や地位は守られているとは言いがたく、少数集団もまた武装し、ゲリラ然としている場合もあり、学者を含めて他人との接触を嫌う人々も多くいるのです。

少数の集団は、いろいろな危険に晒されているため、他者との接触を、経済的あるいは物質的なメリットで保証されていない限り、喜ぶことはないのです。

なおアフリカにはツェツェバエが媒介し治療薬のないアフリカ睡眠病、終生免疫を獲得することが叶わず何度も感染する危険性があるマラリア、森にはエボラ出血熱などもあります。

ピグミーが住む森林地帯の感染症リスクは、とても高くなっているのです。

基本的にアフリカという土地は、広範囲な研究が安易に行えるという地域ではないことになります。

東南アジアのピグミー(ネグリト)

四つ目の人種:オーストラロイド

オーストラロイド(出典:World Atlas)

ネグロイド(黒人)、コーカソイド(白人)、モンゴロイド(黄色人種)と並ぶ、四つ目の人種がオーストラロイドとされています。

オーストラリアやオセアニア、フィリピン、タイ、スリランカ、ムンバイを中心としたインド南西~南部などに住む人種が、オーストラロイドと呼ばれているのです。

肌が黒く、見た目は黒人に似ていますが、遺伝子学上はアフリカ系のネグロイドからの直接的な系譜ではなく、コーカソイドつまり白人あるいはモンゴロイドというユーラシア系から枝分かれした集団となります。

東南アジアのピグミーことネグリトは、このオーストラロイドに所属した小柄な少数部族のことを指している言葉です。

東南アジアにいるピグミー部族(ネグリト)

アンダマン人

インド領アンダマン諸島のセンチネル島の住民たち(出典:The Guardian Nigeria)

アンダマン人は、インドのアンダマン諸島に住む人々です。18世紀には7000人がいたとされるものの、現在は各部族、数十から数百人しかいません。

免疫を持たない外来の病気、イギリスによる植民地戦争、1940年には日本軍による部族への嫌悪由来の爆撃、生活の場である森林などの消失により人口は激減しためです。

世界で唯一の孤立した部族である、センチネル島の住民も含まれる。

センチネル島の住民に友好的な接触は期待しがたく、基本的に彼らは接近者に弓矢などにより殺意を示し、威嚇以上の攻撃を実行します。

2018年11月17日には、キリスト教のアメリカ人宣教師がセンチネル島に渡り殺害されました。

インドの法律では、センチネル島への接近が禁じられています。

アエタ族

アエタ族(出典:GMA Network)

アエタ族は、フィリピンのルソン島の先住民です。フィリピンに住む最も古い人種という説があります。人口は数千~1万人程度、狩猟採集、漁労を行い、最近では焼き畑農業も行います。

特定の政治的指導者を持たない部族であり、宗教はアニート(アニミズム/自然・精霊信仰)です。

アニートは、先祖の霊とディワタ(人間以外の霊・あるいは神、もしくは悪魔)を崇拝・信仰・畏怖して儀礼により避けたりします。

セマン族

セマン族(出典:trip down memory lane)

セマン族は、マレーシアおよびタイマレー半島に住む部族で、人口は2000~3000人程度です。

一定の居住地を持たずに、森林地帯を放浪する狩猟採集民族です。かつては弓を好み、現在は吹き矢を使っています。アニミズムを信仰しますが、最高位の精霊を規定し、一神教的性質を持ちます。

マレー人とのあいだでは、一定の場所にお互いの品物を置いて下がり、合図と共に交換して持ち帰るという「沈黙交易」を行います。

沈黙交易はお互いの直接的な接触を行わないため、伝染病対策として有効です。

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ピグミーの文化は変わってきている

部族を特定するための言葉や文化、宗教、あるいは遺伝子などは、狩猟採集者が維持することは難しいものです。

現代文明との接触により、文化も宗教も遺伝子も交流してしまうため、少数集団の部族的な特徴は大きく変わってしまいます。

かつての狩猟採集民も、農業に従事するようになり、金銭のトレードで生活を行うことになったのです。

ピグミーを含み、狩猟採集民の文化や遺伝子構造は、大きく変わっていく運命にあります。

まとめ

  • ピグミーは遺伝子の要因で小柄である
  • ピグミーはそもそも「小さな部族」という大雑把なカテゴリー
  • 各ピグミー部族には遺伝的なつながりがない可能性もある
  • ピグミーの小柄さには環境要因が関係する説もある
  • 東南アジアのピグミーは黒人に似ているが、遺伝子的には白人と黄色人種に近い
  • 狩猟採集民族の文化は維持しにくい

経済発展による開発や交流、宗教の布教活動、紛争地帯の民族浄化、さまざまな外的要因に晒されることで、少数部族のライフスタイルは変化の圧力を受けることになります。

ピグミーの立場も、そういった圧力を受けるマイノリティの狩猟採集民です。

少数部族に広大な土地が与えられる可能性は高くはないのが現実であり、ピグミーに対する研究のスピードが向上することはなさそうなのです。

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