アラブ人とは?ペルシャ人や中東人なども一緒に解説

「中東」と呼ばれる地域には古くから多くの民族が住んでいます。イスラム教徒の多い土地になりますが、それ以外の宗教も定着している土地なのです。

この中東には多くの民族が暮らしていますが、「アラブ人」という最大のグループがあります。

今回はアラブ人という言葉が指す民族とは、一体どういった人々なのかをご紹介していきます。またペルシャ人や中東人との違いについても解説していきます。

アラブ/アラブ人とは

アラブ人の定義

「アラブ人」と呼ばれる人々を定義しているものは、「居住地域」と「使用している言語」の二つになります。

まずはアラビア半島を中心にして、その周辺の国々(アラビア半島・西アジア・北アフリカ)に住み、アラビア語を話している人々こそがアラブ人なのです。

つまりアラブ人とは人種ではなく、言語などの文化を中心にカテゴリー分けされた集団になります。

なおアラビア語はアフロ・アジア語族のセム語派に属しています。

アラブ人の外見的な特徴?

アラブ人の外見的な特徴はさまざまなものがあります。

中東地域は古くから多くの民族が移動してきた土地だからです。

南に位置するアフリカから来た人々もいれば、北にあるヨーロッパや東にあるアフガニスタンやインドに先祖を持つ人々もいるからです。

大昔から白人、黒人、黄色人種などのさまざまな人種が入り乱れるように住んでいた土地になるため、遺伝子は混ざり、その外見は多様なものになります。

白人のように金髪碧眼の人もいれば、黒人のように肌も髪も黒い人もいます。

また兄弟や姉妹のなかでも髪や瞳の色が違うなど、外見には多様性があることも特徴であり、多くの人種がアラブ人の先祖に含まれていることの証拠にもなるわけです。

アラブ人を外見的な特徴で定義することは、とても困難なことになります。

アラブ人の人口

アラブ人は中東および北アフリカで最も多い民族になり、その人口はおよそ3億5000万人~4億2200万人になります。

また中東地域や北アフリカ以外にも、それらの地域から海外に移住していったアラブ人の子孫たちは世界各地にいるのです。

ブラジルにはレバノンなどから移住したアラブ人の子孫が多くいます。

およそ1500万人~1700万人のアラブ系ブラジル人の方々が暮らしているのです(アラブ系ブラジル人でアラビア語を中心に話す方は少数派で、ポルトガル語を多く使っています)。

アラブ系ブラジル人の有名人にはカルロス・ゴーン氏などがいます。

アラブ人の宗教

アラブ人の多くは「イスラム教スンニ派」の信者になりますが、ほかにもキリスト教徒や少数ながらユダヤ教などを信仰している人々もいます。

宗教はアラブ人を決める要素ではないことの証と言える事実です。

あくまでもアラビア語を使っている人々が、アラブ人になります。

ペルシャ/ペルシャ人とは

ペルシャ人の定義

中東の有名な民族にはペルシャ人もいます。

ペルシャ人はイランを中心に住み、ペルシャ語を話す人々のことです。

イランでは彼らのことを「ファルースィー」と呼び、その言葉の意味は古代イランの「パールサの人」になります。

ペルシャ人もアラブ人と同じく、言語的な分類によって定義されている民族です。

現在のイランでは総人口の61%~65%がペルシャ人とされています(ペルシャ語の「方言」は多いため、どこまでをペルシャ語と認めるかで、ペルシャ人の人数も変わるわけです。文献によれば70%という数字もあります)。

ペルシャ語はインド・ヨーロッパ語族に含まれています。つまり、アラビア語とは異なる源流を持つ言葉なのです。

ペルシャ人の外見的な特徴?

イランの数学者マリアム・ミルザハニ
(出典: Persians Are not Arabs)

基本的にはコーカソイド/白人のような外見をしている人が多くなります。

髪の色は黒髪が多いものの、子供の頃は金髪が黒髪に混じることも多いのです。

顔の彫りが深く毛深いことも特徴になります。

しかしアラブ人と同じようにペルシャ語を話す人々こそがペルシャ人であり、外見がどうあろうともペルシャ人を決める要素にはなりません。

ペルシャ人の宗教

ペルシャ人の多くは「イスラム教シーア派」の信者になります。

イスラム教シーア派はアラブ人などが信仰しているイスラム教スンニ派に比べると、かなり少数派の宗派です(イランでは多数派)。

世界のイスラム教徒全体におけるシーア派の割合は10~20%で、スンニ派は90~80%になります。

中東/中東人とは

中東に住む諸民族

アラブ人やペルシャ人以外にも中東地域に住む人々は多くいます。

彼らもまたアラブ人やペルシャ人と同じようにイスラム教を信仰していることが多いわけですが、アラブ人やペルシャ人と呼ばれることはありません。

何故ならば、アラビア語もペルシャ語も使っていないからになります。

中東の国であるトルコは、トルコ語を使うためアラブ人にもペルシャ人にも属することはないのです。

アフガニスタンでは、パシュトゥーン語とタジク語が多く、アラビア語とペルシャ語を話す人はいません。

中東やその周辺の地域に住んでいる人々は、話す言葉により民族が分かれていることになります。

中東における主要な民族

中東の主要な民族
  • アラブ人:アラビア語を話す。中東では最も多い。
  • ペルシャ人:ペルシャ語を話す。イランに集中して多い。
  • トルコ人:トルコ語を話す。トルコ人のこと。
  • クルド人:クルド語を話す。トルコやイラン、イラク、シリアなどにいる人々。
  • ユダヤ人:ヘブライ語を話す。中東ではイスラエルに集中して多い。

中東にはさまざまな民族が、それぞれの言語で文化や宗教、そして独自の歴史を継承しながら暮らしているのです。

なお上記の言語のなかでアフロ・アジア語のセム語派に含まれるのは、アラビア語とヘブライ語になり、インド・ヨーロッパ語族に含まれるのは、ペルシャ語とクルド語になります。

トルコ語はテュルク諸語に含まれます。

アラブ人/ペルシャ人/中東人の共通点や違い

アラブ人とペルシャ人・中東の諸民族の共通点

地域が隣接していることと、宗派は違うもののイスラム教徒が多いことには共通点があります。

中東や北アフリカは基本的にシーア派かスンニ派かの違いはあったとしても、イスラム教徒が多くを占めています。

イスラム教徒が多いということは、民族や人種にかかわらず、中東に住む人々の特徴となるわけです。

また会話に使っている言葉に違いがあったとしても、使用している文字はアラビア文字が多いことも共通点になります。

イランなどでは7世紀以降のイスラム化のさいに、それまで使っていた文字は失われていったのです。

アラブ人とペルシャ人の大きな違い

ペルシャ人はアラブ人と呼ばれることを嫌う人々もいます。

イスラム教以前の古い歴史と独自の文化を持っているイランの人々としては、ペルシャ人であることに大きなプライドを持っているのです。

ペルシャ人の多くが信仰しているイスラム教シーア派は、厳格で質素なことを尊ぶスンニ派に比べると、芸術や音楽、思想に対して寛容さがあります。

偶像崇拝を禁止するだけでなく、「生き物」を絵に描いてはならないという教えがイスラム教にはありますが、スンニ派などはそれを強く守る一方で、イランのシーア派は教祖であるムハンマドを絵にすることさえもあるのです。

イランは7世紀に南から来たイスラム勢力に制圧され、イスラム化をすることになったわけですが、アラブ化まではすることなく、独自の文化と歴史を守り、継承してきたことになります。

アラブ人とペルシャ人には継承した歴史や言語、そして信仰するイスラム教の宗派の違いがあるのです。

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まとめ

  • アラブ人はアラビア語を使う中東および北アフリカの人々
  • アラブ人にはイスラム教スンニ派が多い
  • アラビア語はアフロ・アジア語のセム語派に属する
  • ペルシャ人はイランに多く、ペルシャ語を使う人々
  • ペルシャ人にはイスラム教スンナ派が多い
  • ペルシャ語はインド・ヨーロッパ語族に属する
  • 中東にはアラブ人やペルシャ人以外にも多くの民族が暮らしている
  • 中東の宗教はイスラム教が多い
  • 民族はそれぞれの歴史や言語・文化が決める

アラブ人=イスラム教徒のようなイメージや、イラン人=アラブ人のようなイメージがあるものですが、それらは間違った考え方になります。

民族を定義するものには血筋や人種ではなく、言葉や文化などの共通する点があることが重視されるものです。

多くの民族と多くの宗教が共存し、ときに対立してきた中東らしい考え方かもしれません。

しかし宗教や民族だけでなく国家というアイデンティティでも集団は別れているため、ときに民族の違いが国内で争いを招くこともあります。

今回の記事が中東の複雑な民族分布を理解するための手助けになれたなら幸いでございます。

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