私たち日本人は、お寺に出かけてありがたい仏像に手を合わせたことが幾度かあるでしょう。そんなとき優しいお顔の仏様が出迎えてくれます。
でも仏様の頭は何故パンチパーマのようになっているのかと思ったことはありませんか?
あの頭にある塊はなんだろうかと気にしながらも、さらっと流してしまうことが良くあります。
それは仏像のヘアスタイルだったのです。
これは螺髪(らほつ)と言います。
それでは、ここでは螺髪の意味や作り方などについて解説していきましょう。
目次
螺髪とは
三十二相八十種好
螺髪(らほつ/らはつ)とは仏像の丸まった髪の毛のことです。
螺髪とは、お釈迦様の32の特徴をまとめた三十二相八十種好(さんじゅうにそうはちじっしゆこう)のひとつ、毛上向相(もうじょうこうそう)をあらわしています。
三十二相八十種好とは、見てすぐにわかる三十二相と、微細で良くみなければわかりにくい八十種好を合わせたものです。
螺髪なのは、皆悟りを開いた仏様ということで如来像に限られます。
仏様のお姿の特徴であるとともに宗教的な理想も含まれています。
この三十二相をもとにして、ほとんどの仏像や仏画が作られるのです。
毛上向相
毛上向相(もうじょうこうそう)は知恵を表しています。 螺髪の“螺”は巻貝のことで、仏像によって数が違います。
ギリシャの影響の強かったガンダーラでは髪型は波状でしたが、インド神話でクリシュナの聖地マトゥラーでは渦巻状になりました。その流れで日本にも螺髪の仏像が入ってきたのです。
つまり簡単に言うと、仏様の髪の毛を螺旋(らせん)状に巻いているということで、やはりパンチパーマみたいですね。
しかしその内容は宗教に深く関与していたのです。鎌倉の大仏を除き、みんな右巻きになっています。理由はわかっていません。
螺髪以外の仏様の髪型
垂髻(すいけい)
菩薩様の髪型です。部分的に束にして結い上げていくつかに振り分けて垂らしたものです。
冠をつけているのでなかなか分かりにくくなっています。
螺髻(らけい)
梵天様の髪型です。頭の上部を螺の形に結んだものです。横から見ると渦巻状になっています。
梵志で髪を螺髻にしたものを、螺髻梵志(らけいぼんじ)、とか、螺髻仙人(らけいせんにん)と言います。
梵志の意味は、梵は清浄を表す言葉ですから梵志は清らかな行を修め梵天に生まれようと志すもののことです。これを婆羅門(バラモン)といいます。やはりありがたい仏様ですね。
肉髻(にっけい)
螺髻に似ていますが、天辺が一段盛り上がっているところをいいます。
髪ではなく脳が膨らんで、頭が高く盛り上がっていることから、頭脳明晰を意味します。
肉髻と頭の境目にある珠は、肉髻珠といい、智恵が身体から発する光として表現されています。
螺髪の作り方
簡単な作り方
一般の私たちが螺髪を作るとしたらできるでしょうか。
まず木の板を用意します。その板が丸くなるように周りを削ります。
円柱になった先端をゆるく尖らせて、鉛筆で螺旋を描きます。
その線に合わせて削っていき、螺髪の部分のみ切り取れば出来上がりです。
実際の螺髪
しかし仏像に作られた螺髪は、そう簡単なものではないでしょう。
実際には専門の職人がもっと手をかけた螺髪をいくつも作り仏様の頭につけていくのですから大変です。
鎌倉の大仏では、直径24センチ、高さ18センチの螺髪が656個もあるのです。
大仏様頭が重くて肩が凝りそうですね。
ちなみに鎌倉の大仏様は11.39メートルの大きさです。
では東大寺の大仏はどうでしょう。14.7メートルの大仏様には492個の螺髪があります。
275.2センチメートルの飛鳥大仏は700個もの螺髪を有しています。
このように大仏さまの大きさと、螺髪の大きさにはそれぞれ違いがあるのです。
15メートル近い東大寺の大仏様の螺髪の数より、小さい飛鳥大仏の方が多いのですから。
お釈迦様の髪型
ではあのお釈迦様(釈尊、仏陀)の髪型はどうだったのでしょうか。
伝わるところによると、お釈迦様は3~4センチほど髪を伸ばしていたそうです。
その一本一本は右巻きに巻かれていました。
やはり螺髪になっていたのですね。
白毫(びゃくごう)
仏像のヘアスタイルばかりに気を取られていましたが、仏様のお顔を見たとき眉間のあたりにホクロのようなものがあることに気がつきましたか。
これは白毫(びゃくごう)といいます。
如来様の眉間の少し上に生えている白い毛のことを指します。
この毛は伸ばすと約4.5メートルもあります。眉間白毫とも言われており、三十二相の31番目に当たるそうです。
まとめ
- 螺髪とは如来様の髪型のことだった
- 螺髪以外にも仏様の髪型は何通りもあった
- 螺髪は意外にも簡単に作れる
- 実際のお釈迦様も螺髪だった
- 髪型以外にも三十二相の白毫がある
以上のように螺髪について色々と見てきました。
普段私たちが何気なく見ていた仏様の髪型にも色々あることがわかりましたね。
そしてそれは、智恵などの意味を持っているのです。
今度仏様を拝む機会があれば、ああこれが螺髪かとちょっと物知り顔で拝顔してみてもいいかもしれませんね。
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