仙人とは何か?意味や寿命、種類など解説

人々が古来から求めているものに長寿や健康があります。

それらの欲求の極地が「不老不死」という言葉になるわけです。

今回は「不老不死」の体現者ともされる、仙人(せんにん)についてご紹介していきます。

仙人という存在にはどういった意味や種類があるのかも解説していきます。

仙人(僊人)の意味と分類

仙人は中国古来の神々と道教における超人

中国には多くの宗教や哲学が古来より存在しています。

そんな中国において「仙人(せんにん)」と呼ばれる立場にあるのは、仏教の神仏など外国から伝わって来た異教の神々ではなく、「中国オリジナルの神々」も含まれます。

また道教成立後は、修行の果てに体内の陰と陽の気の調和を果たし、「不滅の真理」を得るに至った修行者もまた仙人になれるという考え方になったのです。

仙人とはそれら二つによる、不老不死であり不思議な術の数々を体得した者のことを指す言葉になります。

なお仙人は古くは「僊人」とも書かれており、この言葉の意味は「高いところに昇る人」になります。

仙人は不死であるだけでなく、空を飛び天界に暮らす存在でもあるのです。

仙人の階級や種類

仙人にも階級が存在しています。

神仙(しんせん)

自然を化身とする古代中国神話などに現れる神々。神仙と自然は一体の存在であり、「人もまた神仙になれる」ともされる。医学を伝えた神話上の皇帝である「黄帝」、女仙人たちの頂点であり虎の半身をもつ「西王母(メソポタミアの月神に起源という説もある)」など。

また関羽などの三國志で有名な古代中国の武将や政治家たちも道教では神格化されている。

真人(しんじん)

仙人よりも上級の存在、あるいは上級の仙人。天界の官僚として天界を運営する高位の神々。

天仙(てんせん)

最高位の仙人であり、仙道を極めた存在かつ「天空」という領域に住む仙人のこと。道教の究極的な到達点

1200の「儒教的な基準」にもとづく善行を連続して行うことで、その立場に至るとされる。

【関連記事】

地仙(ちせん)

仙道を極めてなお地上の一般的な世界に残って「名山」を行脚しつつ長生きをする仙人のこと。地仙になるためには300の善行が必要とされる。

尸解仙(しかいせん)

いったん死んだ修行者の肉体から魂が抜け出した後に、その魂が死体を回収することで仙人になる。回収された死体は棺や埋葬地から消失し、衣冠、刀剣、仙経、竹杖などを残す。仙人としての位は最も低い

「死ぬこと」を契機にして「尸解(しかい)」という解脱の流れがスタートするため、天仙・地仙の生きたまま仙人になることに比べると違いがある。仙人は死なないことが条件なので、尸解仙はその意味では最も低い能力の仙人になる。

仙人を目指す人々と道教の神仙を崇拝する人々

道士(どうし)

仙人になるための修行者。道教の教義に生きる宗教家、一種の「僧侶」でもある。古代中国のシャーマンの衣装を身につけている。道教は宗派によって出家する道士と、出家しない道士に分かれる。

仏教の僧侶との大きな違いは独特な衣装と、頭髪や髪を伸ばしている姿。自然崇拝である道教においては頭髪などにも神が宿るとされ、それを切ることはなく伸ばしてまとめている。

方士(ほうし)

道教の成立以前から古代中国(紀元前3世紀~5世紀頃)にいた「尸解」(羽化ともされる)を使って神仙になろうとする修行者。

錬丹術(れんたんじゅつ/特別な薬品を製造・使用して人の体を神仙へと変えようとした錬金術の一種)、古代中国医学、科学、天文学、軍学、さらには「鬼神」を使役する特別な術を用いたとされる。

道教の成立後は方士は「道士」と呼ばれるようになり、一体化していく。呪術師である方士は社会的な地位が高く、皇帝などにも助言することが可能な立場にあった。方士たちは神秘が支配する古代世界の「学者」であり、インテリである。

秦の始皇帝に不死の薬の存在を教え、その探索を持ちかけた徐福(じょふく)などが有名。

童乩(タンキー)

いわゆるシャーマンであり、自らの体に道教の神仙を憑依させて神仙の意志を人々に伝える役割をもつ存在。民間信仰に近く、社会的な地位は高いとも言いがたい立場である。

なお憑依させるターゲットは仏教の守護神や仏なども含まれている。東南アジアの華僑社会では集合的(他の宗教の神々や価値観を自分の宗教に取り入れる行い)な傾向が強くなっている。

東南アジアのタンキー廟(一種の教会)では道教の神々や仏教の神仏だけでなく、ヒンドゥー教の福の神ガネーシャ、イエス・キリスト、アッラー、聖母マリアなどのキリスト教の聖人たちがまとめて祀られていることもある。

【関連記事】

仙人の能力

仙人の寿命は?不老不死?

不老不死あるいは極めて長寿とされます。

神仙信仰に生きる方士たちは不老長寿の薬や手段を求めて、呼吸法、瞑想、武術、錬丹術、錬金術、食事療法などを研究しています。

神仙信仰においては人もそれらの健康法・長寿の方法を実践することで、仙人になれると考えられているのです。

不老不死である仙人になれる「薬」などもあると考えられており、その製法を求めて方士たちは錬丹術(=不老不死の霊薬をつくるための錬金術)の研究を行います。

しかし錬丹術のもたらした薬には水銀という毒性の強い素材を用いた薬が多くあり、それらを愛用した皇帝などの社会的な地位が高かった人物たちの健康を大きく阻害したとも考えられているのです。

仙人の錬丹術

多くの健康被害を出したとも考えられる錬丹術ですが、この錬丹術は中央アジアなどの錬金術などとの交流も行っていたと考えられています。

神秘性に傾倒して原始的ではあるものの、薬草の採取や分類、金属などの結果的な毒性の把握などにより、「基礎的な自然科学」の情報を蓄積することにつながっていったと考えられています。

古代世界の科学的な価値観においては「原子」や「分子」などに物質の違いを求めることは当然ながら行ってはいないのです。

金属のなかで銅や金の違いがある理由を「神聖さの優劣」などと、古代においては考察しています。

そういった考え方は金属などの物質だけではなく、人体や精神にも及んでいるものです。

そのため修行や一定の法則に基づいた儀式などで、物質や人体や精神をより「聖なるもの」へと導く手段があるのではないかと考えたわけです。

金が「聖なるもの」としての能力が10だとして、銅は3ならば、何らかの努力や儀式、物質に宿る法則などを用いて銅に対して+7を行えることが出来れば、銅も金と成り得るわけです。

原子などの根源的な違いに基づく「絶対の差」を考慮してはいない考えであり、人体であれば正しい修行を行えば銅=凡人から金=仙人になれる、という発想にもつながります

また薬物は人体にも影響を与えるため、薬物をつかうことで+7を行うことも可能になるとも考えられており、「凡人を仙人に変える薬」という概念の成り立ちにも関わっているのです。

仙人の持っている能力

不老不死以外にも、仙人には多くの特殊な能力である「神通力」や「法力」という力があるとされています。

仙人の能力
  • 空を飛べる。
  • 水上を歩く。
  • 千里眼(はるか遠くまで見通せる能力)を持つ。
  • 炎に焼かれても燃えることがない。
  • 姿を消せる。
  • 何十人にも分身することが可能である。
  • 暗がりでも視野を確保することができる。
  • 鳥獣や蛇などの動物たちをコントロールできる。

仙人の外見的な特徴

(出典:wikipedia)

一般には頭の長い老人男性の姿が絵画などでは描かれることが多くなりますが、女性である仙女などもいます。

古い時代になるほどに女性の仙人なども増え、あるいはそれらに象徴される能力も高度なものとなる傾向があります。

また古代の仙人、あるいは古代の神仙であるほど異形の姿として描かれる傾向もあるのです。

仙人も時代が新しくなるにつれてキャラクターとして求められる要素が変わっていったことになります。

仙人と道教

仙人は道教を極めた存在

(出典:wikipedia)

仙人は道教の思想を究極の形で体現した存在とされます。

道教の「道(タオ)」とは「辶」が「終わり」を示し、「首」が始まりを示すものです。

つまりは始まりにして終わりであり、ひらたく言えば「森羅万象の全て」を示すものになります。

中国の古代からの思想である「陰陽五行」という万物の創世と法則をまとめた考え方に基づき、「道(タオ)」とは陰陽という根源的な要素を制するための方法になります。

「タオ・マスター」が仙人であり不老不死の存在になるのです。

また道には呪術的もしくは魔術的な要素が多く含まれており、鬼神を使役する方法や、水と呪符による病魔の駆除なども行われます。

【関連記事】

道教における仙人になるための方法

【道教】仙人になる方法
  • 錬丹術などの薬を使う。
  • 拳法、呼吸法、食事療法などで「気」や肉体を調整して長生きをはかる。

修行にせよ薬物の投与による肉体の改造にせよ、仙人になるための方法はあるのだと考えられています。

しかし道教は「学ぶことは可能だが教えることは出来ない」ものとされており、道士たちの教えや書物は道を示すものに過ぎず、それぞれが独自の答えを自力で探すことになるようです。

仙人になる道は険しいようです。

中国以外の仙人:聖仙

古代インドの神話をまとめたヴェーダ聖典には多くの「リシ(聖仙)」と呼ばれる存在が登場します。

リシ(聖仙)はさまざまな超能力を有している「苦行者」です。

インド独自の修行法であるヨーガや肉体や精神的な苦痛をともなう荒行である「苦行」を行うことでリシ(聖仙)たちは偉大な力を獲得したとされます。

なお古代インド神話の多くはバラモン(カースト最上位の司祭階級)の力や正当性を保障するような書き方になっているため、ヨーガを極めた「聖仙」たちは時に神々よりも強い能力を発揮する存在と書かれているのです。

バラモンの神話上の祖先が聖仙たちであるため、古代インドの神話における聖仙たちの活躍はバラモンの階級に属する人々を宗教的・文化的・政治的にフォローすることになります。

聖仙と中国の仙人と共通するところは、修行などにより特殊な力を身につけたことなどが挙げられます。

【関連記事】

まとめ

  • 仙人は不老不死
  • 仙人は道教の理想を体現した存在
  • 仙人の種類は天仙・地仙・尸解仙
  • 上位の仙人は真人
  • 仙人になるための方法は修行や薬
  • 仙人はさまざまな能力を持っている
  • インドにも聖仙/リシと呼ばれる仙人の伝承がある

不老不死という夢は誰しもが一度は考えるものであり、仙人はその体現者なのだとされています。

不老不死への憧れから古代の皇帝たちも仙人になる薬を求めたり、仙人たちを信仰したりするような時代もあったわけです。

現代医学でも究極の夢であり目標になるものですが、古代に化学を使ってそれを目指したという考え方は興味深くもあります。

神と人の絶対の境目がないという考え方は、人に超人への夢を与えてくれるものとして、多くの娯楽作品にも影響を与え、今もって我々を楽しませてくれてもいるのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA