ラクシュミとは?絶世の美女の神様について解説

無数の神話と、多くの神々から構成されているヒンドゥー教の神話群には、当然のことながら多くの女神が登場します。

ラクシュミも女神たちの一人として登場し、その美しさと能力から多くの人々に信仰されている女神です。

今回は、絶世の美女としても名高いヒンドゥー教の有力女神、ラクシュミをご紹介していきます。

ラクシュミは、どんな能力を持っているのかも解説していきます。

ラクシュミは美と富と豊穣と幸運を司る女神

ラクシュミはヒンドゥー教の天地創造である乳海撹拌で誕生

ヒンドゥー教における天地創造の神話に、乳海撹拌(にゅうかいかくはん)と呼ばれるものがあります。

神々と悪魔アスラたちが手を組んで、不死の霊薬アムリタを作るために、原初の世界を粉々にしながらかき混ぜて、太陽や月など、世界のあらゆるものを生み出したという神話です。

ラクシュミは、この乳海撹拌のときに誕生した女神の一人になります。

ラクシュミはとても美しい女神であったため、悪魔アスラたちは彼女のことを手に入れようとして、一度はラクシュミを捕まえたのです。

悪魔はラクシュミを頭の上に乗せていましたが、そこからラクシュミは一瞬のうちに逃げ去ったと伝えられています。

ラクシュミの美しい姿

美しい女神として知られるラクシュミは、蓮華をシンボルとした女神になります。

蓮華の目と、蓮手の色をした肌、そして蓮華の衣をまとって、赤い蓮華の上に乗っているのです。

ヒンドゥー教の神々に共通する特徴として、腕の多さがありますが、ラクシュミもまた四つ腕の女神になります。

その腕には水蓮を持っている場合や、貯金箱を持っている場合もあるのです。

彼女の腕からは、大量の金かがあふれ出ているともされます。

つまり、ラクシュミは美しいだけにとどまらず、金運と富をも司る、財宝神、福の神としての性質も多く有している女神なのです。

また、ラクシュミは白いフクロウを、自身の乗り物としてしています。

豪華さや美しさを持つ女神なのが、ラクシュミなのです。

ラクシュミは多くの幸運を与えてくれる女神

ラクシュミが象徴する能力は、善良さ、幸運、繁栄、農業の豊作、成功、幸福、金運など、多岐に及んでいます。

さらには女性そのものを象徴してもいる神であり、インドの古代の聖典では、全ての女性はラクシュミの具現化した存在であるともされているのです。

ラクシュミはヒンドゥー教が作られるはるか昔である、紀元前10世紀に作られたコインにも、その存在が描かれています。

3000年前から、お金と関わる女神であったことになるわけです。

長大な歴史の経過と共に、人々からの人気の強い幸運の女神ラクシュミは、多くの伝説や能力を捧げられていき、多神教であるインド神話群のなかでも、確たる地位を手に入れたのです。

ラクシュミと関係する神々

ラクシュミはヒンドゥー教の最高神であるヴィシュヌの妻

ラクシュミはヒンドゥー教の三人の最高神である維持神ヴィシュヌの、永遠のパートナーとされています。

世界の維持と守護を司るヴィシュヌは、この世界に巨悪が誕生したり、並みの神々では解決することが出来ないような大きな災いが起きたさいには、化身アヴァターラを派遣することになっているのです。

英雄となる人物にヴィシュヌは転生を行うことで、世の中に起きたトラブルを解決していきます。

そんなヴィシュヌの転生に、ラクシュミもまた毎回のように付き合うことになるのです。

ヴィシュヌがヒーローとして転生すれば、ラクシュミもまたヒロインとして転生し、彼と結ばれる運命と決まっています。

英雄譚の多いヴィシュヌのアヴァターラの物語に、ヒロインとしてラクシュミの転生した姫も登場するため、ラクシュミもまた人気が高い存在になるのです。

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ラクシュミとヴィシュヌの婚姻

美しいラクシュミは多くの神々に愛されています。

歴史を遡れば、数々の有力神たちから愛され、贈り物を与えられたりもしている絶世の美女なのです。

そんな中でラクシュミは最高神の一人であるヴィシュヌのことを、永遠のパートナーとして選びます。

ラクシュミはその結婚のさいに、自分の姉であるアラクシュミにも夫を与えろという契約をヴィシュヌと結んだのです。

ヴィシュヌはその契約に応えて、ラクシュミとは真逆の「不幸の女神」であるアラクシュミに、ある聖仙を夫として与えることにします。

その結果、ラクシュミはヴィシュヌの求婚に応えて、晴れて両者は夫婦となったのです。

ラクシュミは雷の神インドラとも関係

ラクシュミはヴィシュヌのそばにいる前は、雷の神である有力な神インドラのもとにいたともされます。

ラクシュミは基本的に移り気な性格をしているため、インドラはラクシュミを自分の手元に置いておくためには四つに分けておくしかなかったとされているのです。

インドラはヒンドゥー教よりも古い神であり、古代においてはヒンドゥー教での扱いよりもさらに上位となる英雄神となります。

ラクシュミという絶世の美女を娶るのは、かなり上級の神々ということになるようです。

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ラクシュミとパールヴァティーとサラスヴァティー

三位一体という考え方が、インド神話の根底には存在しています。

そのため、最高神も三人いるわけです。

創造神ブラフマー、維持神ヴィシュヌ、破壊と再生の神シヴァになります。

この三人の最高神たちは、根幹の部分は同一である存在なのだとされているのです。

そういう考え方から、ヴィシュヌの妻であるラクシュミも、他の最高神の妻である二人の女神と同一の存在とされることもあります。

創造神ブラフマーの妻サラスヴァティーと、破壊神シヴァの妻であるパールヴァティーです。

三人の最高神と共に、それと対を成す三人の神妃たちも同一の存在であり、不可分な立場であるという考え方も存在しています。

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ラクシュミはドゥルガーの娘?

インド神話と、それに連なる宗教はあまりにも多く存在しているため、ラクシュミの誕生も乳海撹拌ではない場合もあります。

そんな中で、パールヴァティーの化身でもあるドゥルガーの娘だとされる場合もあるのです。

ドゥルガーは、最高神たちを始め、雷の神インドラなどからも、多くの力と武器を託された悪魔の軍勢を打ち払うために生まれた女神になります。

ドゥルガーは最強の戦闘神の一人であり、創造のための破壊を行う、シヴァと似た性質を持つ女神です。

ヒンドゥー教の女神信仰においては重要な神であり、ドゥルガーもまたパールヴァティーだけでなくサラスヴァティーとラクシュミが一体化した姿ともされます。

女神信仰における一種の最高神という立場でもあるのがドゥルガーであり、その娘ということは、ラクシュミもまた格別に位が高い存在ということになるのです。

インド神話においては、神々が合体したり、同じ神の化身が同時期にいたり、あるいは時系列が破綻していることもあります。

ですが、インドの哲学としては神々は時間などの因果を超越してもいる根源的な存在であるため、矛盾はしてはいないのです。

過去と現在と未来さえも、同一の存在になるため、あまり時系列や因果関係を深く考える必要はないのです。

ラクシュミは富の神ガネーシャと友人

ラクシュミには仲の良い神がいますが、シヴァの子供であり財宝神であるガネーシャとも仲が良いとされています。

また学業と芸術の女神であるサラスヴァティーとも仲が良く、この三者は同一の絵に描かれることがあるのです。

福の神の中心的な神として、ラクシュミは存在しているわけです。

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ラクシュミは仏教では吉祥天

ラクシュミは仏教でも幸運の女神

最高の幸運の女神であるラクシュミは、仏教においても幸運の女神として伝承されています。

それが吉祥天(きっしょうてん/きちじょうてん)であり、吉祥天の名前の意味は、幸運そのものです。

吉祥天の母親もまた守護神

吉祥天の母は鬼子母神となり、鬼子母神は悪魔の一種とも、シヴァの妻である女神カーリーの化身とも、カーリーに由来を持つともされる神になります(※カーリーはパールヴァティーの別の姿ともされます)。

鬼子母神は、子供を喰らう悪神という立場でしたが、釈迦により仏教に帰依したときから、子供の守護神という立場になったのです。

仏教においては、ラクシュミは母親ともども代々の守護神になります。

ラクシュミ=吉祥天は弁財天の形成に関与

七福神の一人である弁財天の、財宝神としての性格はラクシュミ=吉祥天が大きな影響を与えているとされています。

弁財天そのものは、ヒンドゥー教の最高神の一人であるブラフマーの妻サラスヴァティーがモデルなのですが、日本においては吉祥天と混同されることが多かったのです。

最終的にほとんど同一の存在というような扱いになったため、ラクシュミ=吉祥天の性質は弁財天に受け継がれてもいます。

弁財天に受け継がれた性質は、財宝神としてのそれだけでなく、移り気の多い浮気性な性格である、という設定も含まれているのです。

どうあれ、ラクシュミもまた日本の神話や信仰、宗教文化の形成に影響を与えた女神の一人になります。

ラクシュミは最高の女神の一人

美しいだけでなく、富を与える幸運の女神としてラクシュミは大人気の女神です。

女神信仰を支える有力女神として、宗教文化の形成にも貢献している女神になります。

また、最高神が生まれ変わったヒーローのヒロインであるだけでなく、ラクシュミは自己実現という価値観も持った女神でもあるのです。

ラクシュミはインドにおいて、最高の女神の一人になります。

まとめ

  • ラクシュミは最高神ヴィシュヌの妻
  • ラクシュミは最高の幸運の女神
  • ラクシュミは絶世の美女である
  • ラクシュミは最高神の妃神たちと同一視されることもある
  • ラクシュミは仏教においては吉祥天であり幸運の神
  • 吉祥天は七福神の弁財天の性質の形成に影響を与えた

ラクシュミはディワーリー、別名では「光のフェスティバル」とも呼ばれる祭りの主神になります。

大気汚染が心配されるほどに爆竹と花火を使って祝い、この時期に買い物をすると縁起が良いとされていることから、家電や車などが売れに売れる消費の祭典です。

富の女神ラクシュミらしいお祭りになります。

インドをヒンドゥー暦のカールティッカ月の新月の夜に訪れたなら、ラクシュミの祭りに遭遇することが可能です。

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