シヴァとは?ヒンドゥー教の最高神について解説

多神教であるヒンドゥー教においても、最高神と呼ばれる神々が存在しています。

世界と宇宙の創造神ブラフマー、世界の守護者である維持神ヴィシュヌ、そして破壊神シヴァです。

破壊神を最高神として祀るというのは、どこか不思議な印象を受けてしまいます。

ですが、破壊神が最高神としての地位についていることにも理由があるのです。

今回は、ヒンドゥー教の最高神シヴァについてご紹介していきます。

シヴァという破壊神の成り立ち

シヴァはヒンドゥー教以前の神々の性質を継承

ヒンドゥー教には、教祖や開祖と呼ぶべき宗教的指導者が存在していない宗教です。

古くから継承してきたインド神話の神々への信仰や、インド独自の哲学や宇宙観を組み合わせていくことで発生した信仰体系こそが、ヒンドゥー教になります。

そのためヒンドゥー教の「起源」を明確に決めることは困難とされていますが、およそ紀元前5世紀にバラモン教から成立したと考えられているのです。

ヒンドゥー教は、古くはインダス文明の神話まで継承しているとも考えられるため、その側面では3500年以上の歴史があるとも言えます。

膨大な神話の数々の中から、ヒンドゥー教が成立する際に、シヴァは多くの神話や神々が集まるようにして誕生した存在になるのです。

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シヴァの前身はルドラという神

ヒンドゥー教が成立する以前には、シヴァという存在はマイナーです。

ですが、シヴァの直接の原形とされるルドラという神がいます。

ルドラは雲と暴風と嵐を象徴する、破壊的かつ狂暴な神だったのです。

しかし、ルドラの記述もまた多くは存在するものではないのですが、人々から恐れられる破壊的な神という意味では、古代のインド神話では珍しい存在になります。

そのため破壊的で有力な存在であるルドラこそが、破壊神シヴァの原形であったとされているのです。

シヴァが最高神になる過程

ルドラという存在をベースにして、さまざまな土着の神、あるいは既存の神の役割などがシヴァに集められていきます。

雷の軍神であるインドラや、炎の神であったアグニなど、そういった神々の役割も併せ持つようになり、シヴァは多彩な能力を持った神として人気を集めていったのです。

ヒンドゥー教成立前は、マイナーな神であったはずのルドラ=シヴァは、やがて最高神というポジションを与えられることになります。

高まったシヴァへの信仰から、最高神となったわけであり、インド神話の原点からシヴァが最高神であったわけではないのも特徴です。

インド神話によって作られた宗教的哲学は、最高神の座を三つ用意するという答えに行き着きましたが、古い時代においては、その三神の座に、シヴァが含まれていないパターンもあります。

人気と信仰が、ヒンドゥー教という多神教の最高神の座にシヴァを導いたのです。

ヒンドゥー教の最高神シヴァが持っている力

シヴァの最も有名な能力は破壊神としての力

ヒンドゥー教の最高神としての立場となったシヴァには、多くの能力が与えられることになります。

最も有名な力は、ルドラと共通する荒ぶる破壊神としての能力です。

シヴァはとても強い神であり、同じく最高神の座にあるブラフマーの五つあった顔の一つを破壊して、四つにしたこともあります。

性格としては粗暴かつ乱暴な面もあり、自らに逆らおうとする者に対しては徹底的な攻撃を加えることになるのです。

また、シヴァの最大の役目として、この世界に終わりをもたらし、新たな世界を再生するというものがあります。

世界にも始まりと終わりがあるというのがインド神話の哲学であり、この世界も創造神ブラフマーが作り、維持神ヴィシュヌが守り、シヴァが壊した後に再生するのです。

破壊するだけではなく、世界を再生するという偉大な役目を持たされているため、シヴァはただの破壊神として恐れられているだけではない、ということになります。

シヴァは舞踏の神でもある

舞踏の神を表しているシヴァ像(出典:metmuseum.org)

破壊神であり再生の神であるシヴァですが、その役目を実行する際には、妻であるパールヴァティーと共に、踊り始めるとされています。

世界の終末は、シヴァの踊りにより始まるのです。

ヒンドゥー教では、踊りとは神聖な力を宿すものであるとされていて、最高神であるシヴァが世界を破壊するときも、踊りによって力を振るうことになっています。

またシヴァは敵対する勢力から送り込まれた悪魔に乗り、踊りながら殺すという力の振るい方もしているのです。

踊りはシヴァの力を現すための、聖なる行いになります。

偉大な神としての力を、踊ることで示しているシヴァは、踊りや芸術の神としても崇拝されているのです。

インド映画などでダンスが多用されるのも、インド神話ではダンスによる求愛や戦いも珍しい価値観ではないからになります。

踊りは英雄や神が力を見せつける行動として、インドの価値観には根付いているのです。

シヴァは慈悲深い神でもある

シヴァは破壊神であり、その真逆でもある再生の神でもあります。

その特徴を反映するように、シヴァは恩寵と恵みを与えてくれる神でもあるのです。

修行者の解脱を導き、ヨーガを使った修行の守り神でもあり、武術を求める英雄には自ら修行をつけて力を与えてくれることもあります。

強くて偉大な破壊神としてだけでなく、人々の信仰を受けやすいご利益を授ける神でもあるのです。

またシヴァの別の姿ともされるマハーカーラは、厨房の神だともされています。

シヴァは愛妻家な神でもある

左からシヴァ、息子ガネーシャ、妻パールヴァティー

妻であるパールヴァティーと仲が良い神としての側面もあり、ガネーシャなどの子供もいたりします。

パールヴァティーには基本的に甘く、シヴァはその言うことにはほとんど従うことになっているのです。

シヴァ神とパールヴァティーの半身ずつが合体している像などもあり、両者の仲の良さと、最高神に対等かつ、分けることの出来ない神としてパールヴァティーは存在しています。

ヒンドゥー教におけるシヴァの神話

シヴァと乳海撹拌

ヒンドゥー教の天地創造の物語として、乳海撹拌(にゅうかいかくはん)というものがあります。

仙人の呪いにより神々は力を失い、悪魔であるアスラの軍勢に攻め込まれることになったのです。

その過程で世界は荒廃していったため、維持神ヴィシュヌは神々とアスラを説得し、和睦させた後、神と悪魔は手を結び、原初の世界を練り上げて、アムリタという、呪いを解き不死を得るための薬を作ることになります。

原初の世界を動かし、破壊しながらかき混ぜ、色々なものを創造する作業です。

これが乳海撹拌という行いであり、その過程で太陽や月など、この世界にある様々なものが生まれていったとされます。

乳海撹拌に使われていたのは、ヴィシュヌが化けた大亀クールマと、大蛇ヴァースキです。

大蛇をロープにして、世界を神と悪魔で引っ張り回して、かき混ぜることで天地創造をしながらアムリタを作っていきます。

アムリタが完成しそうになった頃、ヴァースキは苦しみ出し、毒を吐いて神も悪魔も痛めつけ始めたのです。

シヴァはその毒を飲み干すことで、この事態を解決しようとしますが、シヴァの体には宇宙があるため、宇宙を毒から守ろうと妻であるパールヴァティーが首を絞めます。

首を絞められたことでシヴァの全身に毒が回ることはなく、喉にだけ毒が溜まり、その部分が青くなった言われているのです。

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シヴァはガネーシャの首を刎ねる

シヴァとパールヴァティーのあいだには、ガネーシャという子供がいます。

ガネーシャはパールヴァティーの垢を集めて作られたともされる神であり、シヴァが家にいない時に誕生したのです。

パールヴァティーはガネーシャに家を守らせていましたが、帰宅してきた父親であるシヴァを、ガネーシャは家に入れるのを拒みます。

シヴァは怒り、ガネーシャの首を刎ねてしまうのです。

そのことに気づいたパールヴァティーは大変に悲しみ、シヴァは自分が刎ねてしまった首を探すために旅に出ることになります。

しかし、旅をしてもガネーシャの首は見つからなかったため、旅の最中で見つけた象の頭を切り落とし、それを持ち帰ると、ガネーシャの胴体とくっつけて蘇生させたのです。

以後、ガネーシャは象の頭を持つ神として生きることになります。

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シヴァは最高神の一人ブラフマーの頭を破壊する

シヴァとブラフマーがケンカをしたとき、ブラフマーは五つあった頭の一つをシヴァの手によって破壊されてしまいます。

それ以降、ブラフマーの頭の数は四つとなってしまったのです。

最高神の一人の頭を一つ少なくしてしまうほど、シヴァの強さは圧倒的ということになります。

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シヴァとパラシュラーマ

破壊神らしく戦いや、軍神の側面を多く持つのがシヴァの特徴です。

シヴァに武術を与えられたヴィシュヌの化身に、パラシュラーマがいます。

パラシュラーマは、カースト制度の最上位にいる僧侶階級バラモンに敵対していた、戦士階級であるクリシュナを滅ぼした、ヒンドゥー教の英雄です。

パラシュラーマは無双の戦士として描かれますが、このパラシュラーマに武芸を教えたのがシヴァになります。

パラシュラーマはシヴァに傷をつけ、シヴァはその傷を弟子の成長の記念にと、あえて残したとされているのです。

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シヴァの持つ特徴的な姿

シヴァの象徴は男性器リンガである

リンガの像(出典:Exotic India)

シヴァの象徴は幾つかありますが、最大の特徴は男性器をシンボルとしていることになります。

シヴァの力の象徴ともされるのが、男性器(リンガ)です。

再生生命の根源といったような意味を象徴するリンガ信仰も、シヴァの特徴となります。

動物的あるいは獣的、もしくは原始的な力の根源として、シヴァの象徴の一つに男性器(リンガ)があり、その像が祀られているのです。

またリンガは男性器だけではなく、女性器も共に描かれていて、つまりは性行為の最中にあるという描写を示しています。

再生あるいは生命を生み出す象徴的な存在として、性行為そのものをシンボル化して使っているのです。

シヴァの象徴は牛

シヴァの象徴は牛の角として描かれることもあります。

インドでは牛は聖なる存在として、大切に扱われているため、最高神であるシヴァの象徴ともされているのです。

角が生えた姿で、男性器を強調された姿などが、古代の彫像にはシヴァとして描かれていることもあります。

シヴァの一般的な姿

シヴァはもじゃもじゃの髪と、伸び放題のヒゲと、三又の槍を持っている姿で描かれることが多いのです。

シヴァは修行僧やヨーガの守護神であるため、その外見的なモチーフには修行僧の姿が反映されています。

またシヴァの額には三つ目の瞳があることも特徴です。

シヴァは仏教では大黒天

神田神社にある大黒天像(出典:ja.wikipedia.org)

シヴァは仏教においては、大黒天/マハーカーラの名で呼ばれています。

マハーカーラは創造破壊と時間を司る存在になり、ヒンドゥー教ではシヴァの名前の一つになるのですが、仏教、とくに密教においては仏教の守護神として扱われているのです。

チベットの密教においては、シヴァのはずの大黒天が、シヴァとパールヴァティーとガネーシャを踏みつけて、仏教に帰依させたことになっています。

また貿易商財宝神としても信仰されていき、日本にはその性格が強く伝わることで、福の神として信仰されていったのです。

七福神の大黒さまとして、シヴァは我々にも身近な存在になります。

シヴァはシヴァ派においては絶対的な存在

ヒンドゥー教のシヴァ派にとっては絶大な支持を集める

ヒンドゥー教は多神教であり、インドの人口の80%を占める宗教です。

そのため多くの宗派があるのですが、その一つにシヴァ派があります。

シヴァ派はその名のとおり、シヴァを篤く信仰している集団であり、シヴァを絶対視しているのです。

シヴァ派においては、シヴァは破壊神以外にも、創造神と維持神の力も兼ねて、そもそも宇宙の根源的な法則そのものである、というように崇められています。

しかし、他の神々を否定しているわけでもなく、ブラフマーもヴィシュヌも重要な神であることは認めているのです。

現在のヒンドゥー教ではシヴァとヴィシュヌが人気

三人の最高神というスタイルそのものは残っていますが、事実上の最高神はシヴァとヴィシュヌであるという解釈が盛んになっているのが現代の特徴です。

現世の救世主であるヴィシュヌと、破壊神ながら新しい世界の創造主になる予定でもあるシヴァには人気が集まっています。

多神教であるヒンドゥー教では、人気のある神が有力な信仰対象になっていくのです。

まとめ

  • シヴァはヒンドゥー教の破壊神である
  • シヴァはルドラという暴風の神が原形である
  • シヴァはヒンドゥー教成立前はあまり人気がなかった
  • シヴァは乱暴者であり愛妻家であり舞踏の神
  • シヴァの象徴は男性器/リンガ
  • シヴァは仏教では大黒天である
  • シヴァは現代では大人気でありシヴァ派では絶対視される
  • シヴァは破壊神であるが世界の再生も司る慈悲深い神

シヴァは多くの神々や神話が吸収されていき、多くの側面を持つ複雑な神格となっていた神です。

古くは人気がなかった神が、だんだんと人気を集めて最高神の一角となり、信仰されるというのは興味深い事実でもあります。

破壊神や再生の神という側面こそ伝わりませんでしたが、七福神の一人である大黒天として、シヴァは日本でも人気のある神なのです。

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