ヤハウェとは?意味や起源、日本やアッラーとの関係など解説

旧約・新約聖書には全知全能とされる「神さま」が出てきます。

この神さまは聖書を経典とするユダヤ教、キリスト教、イスラム教でそれぞれ崇められている神さまのことです。

しかしユダヤ教、キリスト教、イスラム教の名前は有名ですが、それぞれの宗教が信仰している神さまについては、宗教名に比べると知名度が下がります。

神さまの名前や扱い方は宗教によって異なりますが、代表的な名前のひとつが「ヤハウェ」です。

今回は神さまの名前、ヤハウェについて解説していきます。

ヤハウェと呼ばれる神

ヤハウェの起源はユダヤ教

ユダヤ教は古代のユダヤ人が作り出した宗教ですが、その神さまがヤハウェです。

旧約聖書と新約聖書に出てくる神さまは、このヤハウェになります。

つまり英語の神=ゴッドとは、ヤハウェのことです(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教以外の神さまを指す場合は異なることがあります)。

ヤハウェという名がいつ頃から使われるようになったのかについては諸説あります。

ユダヤ教が成立する以前には「ヤハウェ信仰」や、それよりも古い「エロヒム信仰」と呼ばれる宗教たちがあり、これらが集合していくことでユダヤ教とその神ヤハウェが確立していったのです。

ヤハウェの素材になった神さまたち

元々はそれぞれ別の宗教の神さまであったものが融合して、ヤハウェは誕生したわけです。

ヤハウェの素材となった古い神エロヒムは、中東地方にあった多神教の最高神であり、人格があるような神ではなかったのです。

エロヒムは最高の権威をもつ天空神でしたが、人格を作ること、つまり「キャラクターづけ」はされていませんでした。

それにくらべるとヤハウェ信仰の神ヤハウェには慈愛や怒りなどを持つ人格=キャラクターが設定されています。

二つの神さまたちは宗教が合流すると共に、ユダヤ教の神ヤハウェとして確立しました。

以後、聖書における唯一無二の神として、ヤハウェの名は使われるようになります。

ヤハウェの呼び方

ヤハウェはユダヤ教の神であることは当然ですが、キリスト教の神でもあります。

しかしキリスト教においては神=ゴッドのことを、ヤハウェと呼ぶよりも「主」という言葉で呼ぶようにしています。

神学上ではキリスト教の神の名前もヤハウェなのですが、信仰のルールにおいて「神の名前をみだりに呼ぶべきではない」というものがあるため、あまりヤハウェを多用することはありません。

またユダヤ教の古い時代においても、ヤハウェという呼び名は多用を避けられていた時代もあり、そのときも「我が主」という使い方をされていました。

これも「神の名前をみだりに呼ぶべきではない」というルールの結果と考えられています。

紀元前500年代のバビロンの捕囚前後までは、神をヤハウェと呼ぶことが多用されていたため、それよりも後世になって宗教的なルールの改革があったのではないかと考えられています。

ヤハウェの表記

ヤハウェを書くためには「神聖四文字(テトラグラマトン)」を使います。

YHWH(英語)、יהוה(ヘブライ語)と書きます。

なお上記のように古代において神の名を「我が主」や「主」として呼ぶことが盛んであったため、古代のユダヤ教が神をどう呼んでいたのかは実際には不明です。

この四文字は子音だけであり、母音がないため、正確な言葉として読むことができません。

かんたんに言えば略語すぎて正確な読み方は不明なのです。

この神聖四文字を「我が主/アドナイ」と読み替えるための母音を当てた結果に作られたのが、「Jehovah」であり、これを日本語で読めばヤハウェ、あるいはエホバとなります。

学術的な研究の結果、古代においてもヤハウェという呼び名が使われたと予測されていますが、ヤーウェ、エホバなどの呼び名も候補であり、これらの使い方も間違いではありません。

聖書の神=ゴッドとは、ヤハウェ/ヤーウェ/エホバなどと呼ばれる神さまであり、この言葉の意味は「我が主」になります。

エホバの証人の神

20世紀のアメリカで誕生した聖書を経典として使う宗教の一つに、「エホバの証人」があります。

アメリカには100万人以上の信者を持ち、日本でも20万人以上の信者がいるとされる宗教です。

この宗教の神であるエホバもヤハウェのことになりますが、エホバの証人では「エホバ」という呼び方を使っています。

なおキリスト教から派生した宗教の一つになりますが、カトリックおよびプロテスタントからもエホバの証人は異教とみなされている宗教になります。

信仰のスタイルやルールは異なってはいますが、神ヤハウェはこの宗教でも名を変えて唯一無二の「神=ゴッド」として崇められています。

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ヤハウェと日本

古代の日本とヤハウェの関係

古代日本に失われたユダヤ系の集団がやって来たのではないかという説があります。

珍説ではあるものの、古代の日本とユダヤのあいだには共通する点がいくつか存在しているのです。

古代日本とユダヤの共通点
  • お風呂に入る前に体を洗う:ヨーロッパの文化ではなく、ユダヤと日本に共通する文化。
  • 御神輿(おみこし)の形態:箱形の神輿(みこし)を採用している点で、ユダヤと日本の宗教形態が似ています。
  • 神殿の作り方が似ている:参拝客がいる神殿の本体の奥に、ご神体を配置した特別な部屋を作っています。これもユダヤと日本の共通する点です。

八幡神社はヤハウェ神社である?

8世紀に応神天皇が作った八幡神社(やはたじんじゃ)は、秦氏(はたうじ/はたし)と呼ばれる異邦人が来日したときに、彼らを受け入れて援助した天皇です。

秦氏との交流の結果、応神天皇は秦氏の信仰を受け入れて彼らの神=ヤハウェを讃えるために建てた神社が「八幡神社」という説があります。

古来の日本においては神道などが宗教として整備されてはおらず、神道は一般的に異教であった仏教のスタイルを参考にして信仰を作り上げていきました。

そして日本は神道にせよ仏教にせよ多神教です。

そのため秦氏が異教の神を祀っていたとしても、またそれがユダヤの神ヤハウェであったとしても、その名を冠したヤハウェ神社=やはた神社=八幡神社が作れたとしてもおかしくはありません。

秦氏の信じていた神ともされる「アメノミナカヌシ」は天空神の呼び名とも考えられるため、天空神的な要素のあるヤハウェを、太陽神や天空の神々を好む神話観をもった日本が受け入れにくい理由もないのです。

ユダヤ教徒はシルクロードを東に進み、中国にも少数ながら暮らして商業をしていました。

古代において移動能力のある商人が信仰している神が、商人が到達した新しい国にも根付くことは珍しい出来事ではないのです。

もしかしたら、日本の神社や信仰形態のなかに、ユダヤに由来する文化や伝統が継承されていたとしてもおかしくはありません。

ヤハウェとアッラーの関係は?

ヤハウェとアッラーは同一の存在

聖書の神であるヤハウェは、聖書の伝統を受け継いで作られたイスラム教においても唯一無二の神として崇拝されています。

ただしその呼び名はヤハウェではなく「アッラー(アッラーフ)」となります。

アッラーの意味は、神=ゴッドのことであり、固有名詞というよりは地位や立場などを示すものです。

イスラム教においては「神の名をみだりに唱えてならない」の伝統が強化され、また「偶像崇拝を禁止する」というルールもあったため、神に名前をつけて呼ぶことはなかったのです。

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ヤハウェとアッラーの起源は異なる?

現代のイスラム教においてはアッラーは神を指す言葉になりますが、イスラム教が成立する以前において「アッラー」という言葉は、イスラム教の聖地であるカーバ神殿に祀られていた360の神々のなかの「最高神」を呼ぶときの言葉でした。

宗教ではなく考古学的には、アッラーとは最高神に対する呼び名として使われていた言葉になります。

アッラーとは日本語的な意味での「神」に近い言葉であり、名前ではないのです。

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一般的にはヤハウェ=アッラーという理解でいい

ヤハウェという「神の名」に対しては、キリスト教でも呼び名をひかえるようにする方針が採られています。

「みだりに使わない」という理由からであり、その方針はむしろ現代になってからも強化されています。

国際化が進む時代では、宗教が独自のアイデンティティを守るための努力が必要となっているからです。

キリスト教の賛美歌などでは、歌詞にあった「ヤハウェ」という名前を「我が主」や「主」に変えて歌うようになっています。

またマレーシアなどではイスラム教徒以外がアッラーという単語を神を指す言葉として使うことを法律で禁止してもいます。

「神の名」であるヤハウェには、いろいろと使いにくさが生まれていますが、ユダヤ教とキリスト教とイスラム教の神=ゴッドは、ヤハウェという共通の神さまを指しているものです。

まとめ

  • ヤハウェはユダヤ教の神の名前
  • ヤハウェはキリスト教の神の名前
  • ヤハウェはイスラム教の神のことだが、イスラム教ではアッラーと呼ぶ
  • ヤハウェの意味は「我が主」や「主」
  • アッラーの意味は「神」
  • 古代ユダヤの文化が日本に伝わっているかもしれない?
  • ヤハウェをまつったのが八幡神社という説がある
  • ヤハウェやアッラーという「神の名」を多用しないように決めた宗教的な方針がある

一神教においては神さまは一人しかいないため、名前を使わずにも「神」と言うだけで特定の存在を示せます。

多神教との差別化の一環として、「神さまの名前を呼ばない」というルールが重宝された結果かもしれません。

宗教は何かしらのルールを作ることで他の宗教との差別化を行い、アイデンティティを保つことに利用しています。

最も有名な神さまの一人であるヤハウェは、信仰上の理由から知名度が低くなっているのです。

1 個のコメント

  • こんにちは、失礼します。SDA鹿児島キリスト教会牧師のひらたです。貴方の記事を読ませていただきました。有難うございます。
    一つの情報ですが、聖書の神を「唯一の神」といいます。(申命記6章4節)私たちの信仰では、唯一の神とは、「父なる神」「御子なるイエス」「聖霊なる神」を指し、わたしたちはその方々を神としています。
    この「唯一」は原語では「エハド」といい、実は複数形で受けます。「エハド」は集合名刺で、「1ダースの鉛筆」の「ダース」のようなものです。「一ダース」の中には鉛筆は12本あります。それに対して「ヤハド」は一本です。
    仮説ですが「エロヒム」は「エハド」と関係があり、「ヤハウェ」は「ヤハド」と関係があるのではと思います。「主」(アドナイ)は「何か偉大な存在」と訳されています。主なる神というのは、唯一の神のことを指し、「父なる神」=アメノミナカヌシのことでは・・・父なる神は御子イエスをこの地上に遣わされた、イエス=ヤハウェと信じています。(ヨハネ福音書5章46節)

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