大天使ミカエルとは?その意味や見た目、役割、伝説など解説

ユダヤ教やキリスト教では「天使」という神さまの使いがいると考えられています。

天使たちはそれぞれに役割を与えられ、基本的に神さまの指示に従って人類を保護しているのです。

そんな天使たちの中で最も偉大な存在だと信じられているのが、「大天使ミカエル」になります。

大天使ミカエルの名前は有名ですが、彼が宗教に与えた影響はどういったものなのかはキリスト教徒ではない日本人にはイメージが無いものです。

今回は天使たちの頂点である、大天使ミカエルについてご紹介していきます。

大天使ミカエルの概要

大天使ミカエルの役割

大天使ミカエルには四つの役割があります。

一つ目は「天使たちの軍勢の指揮官」であり、天使たちを率いて神に敵対する悪魔の軍勢と戦うリーダーなのです。

二つ目は「死の天使」、全ての死者の魂を天界に運ぶ役目を持っています。死んだあとはミカエルによって人々は天界に連れて行ってもらえるのです。

三つ目は「魂の計量」、死者の魂が善良なのか悪人なのかを調べる役目であり、善良ならば天国に、そうでなければやがて地獄に行くことになります。

四つ目「教会の守護者」、この性質を持っているため中世の騎士たちはミカエルを崇拝していたのです。

大天使ミカエルは古い時代は「癒しの存在」として立場も多くありましたが、時代が経過するにつれて「正義のための戦士」という立場を強めていきます。

ミカエルは事実上、全ての天使たちのトップに君臨している「最も神に近い天使」なのです。

「ミカエル」の語源は「神に似たる者は誰か」であり、その意訳としては「神の力そのもの」「神の似姿」などがあります。

とくにミカエルを重要視するローマ・カトリックでは「大天使聖ミカエル」と呼ばれ、プロテスタントでは「大天使ミカエル」と呼ばれているのです。

プロテスタントにおいて扱いがやや下がっている理由は、宗教改革の影響になります。

神さまへの信仰を強めよう、原点回帰である、という発想の結果、「神さま以外への信仰」を抑制したため、ミカエルなどの天使に対する扱いも下がったわけです。

【関連記事】

大天使ミカエルの見た目

竜(悪魔)を踏む大天使ミカエルの像
(出典:wikipedia)

天使たちの軍勢を率いるミカエルが絵画に描かれるときには甲冑(かっちゅう)を着て大きな剣を持っていることが多いのです。

そして竜(悪魔と同じ意味です)を踏む姿で描かれています。

武装して悪人を踏む構図から分かるように、大天使ミカエルは「神の戦士」というテーマが強い天使なのです。

また役割の一つでもある魂の公正さをはかるための「天秤(てんびん)」を持っていることもあります。

大天使ミカエルのは力強く広げられた形で描かれることが多く、ときには孔雀の羽根のようにカラフルにも描かれているのです。

力強さと正義、そして美しさという偉大なテーマを与えられているのが「神の似姿」大天使ミカエルになります。

そもそも大天使とは?

ミカエルは「大天使」と呼ばれますが、そもそも大天使とは何なのでしょうか?

天使には「9つの階級」があるとされ、大天使は「下から2番目」の階級です。

大天使よりも偉大な天使たちがいることになりますが、それらの天使たちには多くの場合で存在感がなく、信仰されることはミカエルら大天使に比べると稀でした。

そうなった理由は上位の天使たちが人の形から離れすぎていたことや、そもそも役割が分かりにくかったり、教義の中心となっていった聖書に記述が少なかったりしたためです。

じつは有名なミカエルでさえ、旧約聖書に登場するのは3回しかありません。

天使たちはそれほど多く聖書に登場してはいないのです。

またミカエルが大天使という「低い階級」である理由は、天使の階級が9つあるという考えが広まるまでに時間がかかったためだと考えられています。

大天使ミカエルは四大天使・三大天使・七大天使の一人

ミカエルは大天使の一人でもありますが、宗教や宗派によってその扱いは変わってきます。

ブレが生じるのは、天使についての議論は信仰において最も重要なテーマではないからです。

天使はあくまでも「神さまの使い」でしかなく、信者が祈りを奉げるべき対象は「神さま」であり天使ではないため、宗派によって解釈が異なる余地があります。

そのため天使についての扱いは宗教・宗派・時代によっても大きく変わってきたのです。

ユダヤ教やキリスト教で重要視される天使は、「四大天使」と「三大天使」、そして「七大天使」になります。

キリスト教の三大天使の内訳は「ミカエル、ガブリエル、ラファエル」になり、ユダヤ教の四大天使は三大天使に「ウリエル」を追加したものです。

七大天使は四大天使にさらに三人の天使を追加したものになりますが、聖書を構成している文書によって、選抜されるメンバーがそれぞれに記述が異なっています。

七大天使というものの、天使の9つの階級などは無視した呼び名でもあり「大天使」という階級には本来所属していない天使も含まれるのです。

つまり大天使とは「有力な天使」を指す言葉として使われているものになります。

ミカエルはどのグループにも入っていることから分かるように、最も重要で有名な天使の一人なのです。

そのためミカエルを天使の9つの階級における頂点「熾天使(してんし)」という地位を与える宗派もあります。

ミカエルは「最も偉大な天使」という理解をすることで、ややこしさから解放されるはずです。

【関連記事】

ミカエルの各国での呼び名

ミカエルは人の名前としても多用されています。

英語でもマイケル、マイク、ミック、ミッキーなどの名前として人気のある名前として使われているのです。

ドイツ語ではミヒャエル、フランス語ではミシェル、イタリア語ではミケーレ、スペイン語ではミゲル、ロシア語ではミハイル、フィンランドではミカになります。

大天使ミカエルはその名前もまた人気なのです。

大天使ミカエルの言い伝え

ミカエルの声を聞くジャンヌダルク
(出典:Wikimedia Commons)

ジャンヌダルクにお告げをした

大天使ミカエルが登場する最も有名な伝説の一つが、ジャンヌダルクへのお告げになります。

百年戦争の時代、イギリス軍の侵攻により窮地に立たされていたフランスの少女ジャンヌダルク、彼女に対してミカエルは「祖国のために戦え」という使命を与えたのです。

ジャンヌダルクは13才のときにミカエルの声を聴き、その姿を目撃したとされています。

ジャンヌダルクは神がかった指揮と戦略を用いて、フランスを守るために奮戦することになったのです。

モン・サン・ミシェルはミカエルのお告げで建てられた?

フランス西海岸にあるモン・サン・ミシェル(出典:wikipedia)

708年、フランス人の司教オベールの夢にミカエルが現れ、「モン・トンプ(墓の山)」と呼ばれているケルト人(フランスの先住民)の聖地であった岩山に聖堂を建てるように命じます。

オベールは悪魔が見せている夢だと考えましたが、3度同じ夢を見せられたあげく、稲妻で打たれる夢まで見せられたことで、これをミカエルのお告げなのだと信じたのです。

そうしてケルト人の聖地「モン・トンプ」に聖堂を建てたのがモン・サン・ミシェルの始まりになります。

モン・サン・ミシェルは浅瀬に浮かぶ小さな岩山に建てられたものであり、満ち潮のときには周囲が海に沈み孤島となる立地です。

966年からはノルマンディー公リシャール1世によって改築が始まり、修道院が建てられていきます。

13世紀になるまで度重なる改築が繰り返されていったため、オベールの作った最初の聖堂は今では地下にあるのです。

狭い岩山であったため、古い建物に乗せるように建造物が追加されていき、現在のような無数の建物が所せましと並ぶような島になっていきます。

モン・サン・ミシェルは中世以降、カトリックの聖地として多くの巡礼者を集めるようになったのです。

なお百年戦争のときには英仏海峡に浮かぶという立地から「要塞」としても使用され、18世紀末のフランス革命のときには修道院が廃止され、長らく監獄として使われます。

「レ・ミゼラブル」で有名なヴィクトル・ユゴーがナポレオン3世に働きかけたことで、修道院として1865年に復活し、現在では世界遺産に登録されたフランスでも屈指の観光地です。

サンタンジェロ城

ローマのテヴェレ川右岸に位置するサンタンジェロ城(出典:wikipedia)

135年にローマ帝国の五賢帝であるハドリアヌスが自分の霊廟(お墓)を作らせるため工事を開始、次代の皇帝であるアントニヌス・ピウスにより139年に完成した城塞があります。

その城砦はやがて403年にはアウレリアヌスの城壁の一部として改築され、ローマを守る城塞として、そして、ときには監獄として機能してきました。

590年にローマがペストの流行に襲われたとき、この城の頂で剣を鞘に納める大天使ミカエルを、ローマ教皇グレゴリウス1世が目撃したとされます。

ミカエルの動きはペストの終焉を告げるものであったと解釈され、この城はそのイベントから「サンタンジェロ城」=「castel sant angelo」=「聖天使の城」と呼ばれるようになったのです。

【関連記事】

大天使ミカエルの各宗教での扱いの違い

大天使ミカエルは宗教によって扱いが異なる

大天使ミカエルは旧約・新約聖書に登場する天使であり、それらを経典としているユダヤ教、キリスト教、イスラム教においても登場します。

最も扱いが良いのがユダヤ教であり、「ユダヤ人の守護者」として崇められているのです。

守護者として敵を倒し、ユダヤ人を楽園に導いてくれる存在という立場になります。

本来はユダヤ教の伝統としては神に祈りを奉げるものであり、天使であるミカエルは信仰の対象ではなかったのですが、「ユダヤ人の守護者」という旧約聖書での記述が民衆の心をつかんだのです。

キリスト教でも扱いは良く、擬人化されて「実在した聖人たち」のように多くの信仰を集めていき、無数の教会や修道院などがミカエルを崇拝しています。

悪魔と戦う戦士という構図が重視されているため、守護者として多くの人気を集めたのです。

イスラム教においては「戦士」と「預言を与える役目」が、大天使ジブリール(ガブリエル)に奪われているため、ミーカール(ミカエルのアラビア語読み)の役目が乏しくなり、影が薄く扱われています。

イスラム教においては事実上の最高地位にある天使はジブリール(ガブリエル)になっているのです。

【関連記事】

ミカエルは神の子?

エホバの証人や、セブンスデー・アドベンチスト教会などのキリスト教系の新興宗教では、ミカエルと神の子であるイエス・キリストは同一の存在とされています。

天国にいるときの姿と名前が大天使ミカエルであり、地上にいるときの姿と名前が救世主イエス・キリストという考え方です。

ミカエルは有力な天使であるため、ほかの天使よりも神に近しい存在であると考えた説になり、こういった説には堕天使ルシファー(悪魔の長でありミカエルの双子の兄という説がある)も神の子に含むというものもあります。

【関連記事】

ミカエルの起源

ミカエルなどの天使たちは、もともとはユダヤ教が成立していくあいだに他宗教の神々を天使や悪魔として取り入れていったものだという説があります。

「天使」という概念がユダヤ教にもたらされたのはバビロンの捕囚時のことであり、そのときにバビロンの神々など、メソポタミアやシュメールから続く神話がユダヤ教に組み込まれたとも考えられているのです。

ミカエルも雷の神や精霊などであったのではないかという考古学的な予想もあります。

【関連記事】

まとめ

  • ミカエルは大天使で熾天使
  • ミカエルは四大天使であり三大天使で七大天使でもある
  • ミカエルは「最も偉大な天使」
  • ミカエルの意味は「神の似姿」
  • ミカエルの役目は天使の軍勢を率いる、死者の魂を運ぶ、魂の公正さをはかる、ユダヤ人を守護する
  • ミカエルはジャンヌダルクにお告げをした
  • ミカエルのお告げでモン・サン・ミシェルが建てられた
  • ミカエルはイスラム教ではミーカールと呼ばれ、扱いがやや悪い
  • ミカエルには宗教によっては神の子説がある
  • ミカエルはユダヤ教より古い異教の神々が原形かもしれない

大天使ミカエルを含め、天使の記述は聖書には少ないものです。

宗教の教義の中心にいたものではなく、民間伝承や伝説などとして広まっていき、大きな人気と信仰を獲得するようになっていきました。

大天使ミカエルは人間の守護者として人気を集めた存在です。

ユダヤ教の神は厳しい側面を持つ神でしたが、キリスト教では慈悲の側面が強調され人を攻撃するという神ではなくなっていきます。

悪魔と戦うミカエルは、騎士などの戦士から人気を集めやすいものであり、また悪と戦う正義という構図は、物語としても分かりやすいため広く人々に広まったのかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です