一神教であるイスラム教の神さまのことを「アッラー」と呼びます。
良くも悪くも日本で知名度が高まっているイスラム教ですが、アッラーについての詳細は正しく伝わってはいません。
今回はイスラム教の唯一絶対の神さまである、アッラーについてご紹介していきます。
アッラーについての知識を深めて、イスラム教の理解に役立てましょう。
目次
アッラーの正体とは何なのか?
他宗教の神さまとと同じ?
イスラム教・ユダヤ教・キリスト教における神さまは、実は皆同じ神さまを指しているのです。
同じ神さまではあるのですが、それぞれの宗教で以下のように呼び名が異なっているだけなのです。
名前は違えど、みな同じ神さまを指す
- イスラム教:アッラー
- キリスト教:ゴッド(God)
- ユダヤ教:ヤハウェ(エホバ)
これら三つの宗教は、信仰のスタイルやルールが異なってはいるものの、同じ神さまを崇めているのです。
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「アッラー」の意味
アッラーはイスラム教の神さまのことなのですが、実は固有名詞ではありません。
アラビア語で「アッラー」の意味は「神」になります。
一神教であるイスラム教においては、神さまといえば一人しかいないため、固有名詞など必要ではありません。
多神教では文字通り多くの神さまがいるため、それぞれの神さまに名前を付ける必要があります。
しかし、イスラム教の神さまは一人なので、名付ける必要がありません。
なお、アラビア語を話す国々では、他の宗教の信者でも自分たちの神さまのことを「アッラー」と呼びます。アッラーとい単語自体が「神」を意味するからですね。
アッラーに名前がない理由:唯一神だから
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教に共通する考え方ではありますが、「神さまの名前をみだりに口にしてはならない」というルールがあります。
このルールを純粋に守ると、神さまの名前を書くことも話すこともできません。よって、ルールに厳格なイスラム教においては、名前ではなく「アッラー(=神)」と呼ぶようにしたのです。
もちろん、ユダヤ教やキリスト教についても神さまの名前を大々的に呼ぶことはありません。
これらの宗教の信者たちからすれば、神さまは唯一にして無二の存在、つまり唯一神です。一神教においては、神さまの名前は不必要なのです。
アッラー・アクバルの意味は「神は偉大なり」
アッラー・アクバルはイスラム教徒の言葉として有名です。
残念ながら自爆テロを連想する方もいるかもしれませんが、この言葉自体は「アッラーは偉大なり!」、つまり「神さまは偉大だ!」という意味です。
アッラーという単語の語源
アッラー(Allah)という単語は、実は「アル イッラー(Al Ilah)」の略なのです。
「アル」は英語で言う「ザ(the)」、「イッラー」は「ゴッド(god)」です。
したがって、アッラーは英語で「The God」になります。「アル(=the)」を付けることで、唯一神であることを表現できる訳ですね。
ちなみに、「アル」という単語はアラビア語ではよく使われています。日本人もよく知っている「アルカリ」もアラビア語になります。
中世のイスラム世界の科学は進んでいたため、アルカリの他にも、「アルミニウム」、「アルコール」などの科学用語もアラビア語から来ています。
アッラーの起源
ユダヤ教はイスラム教の元にもなっていると言われますが、そのユダヤ教の元にもなっているものに「エロヒム信仰」というものがありました。
エロヒムもまた神さまを意味するような言葉でしたが、これはエロヒム⇒エル⇒アル⇒アッラーというように変化していったのです。
アッラーは一般にイスラム教の神さまを示す言葉になっていますが、イスラム教成立以前からも使われてていた言葉です。
そのときは、今ではイスラム教の聖地であるカーバ神殿に奉られていた「360の神々の最高神を呼ぶ言葉」でもあったのです。
アッラーの特徴
アッラーは慈悲深い
イスラム教過激派のテロリズムの影響のせいか、イスラム教には良くないイメージも少なからず日本にはあります。
しかし、本来はイスラム教もアッラーも慈悲深いところが特徴の一つでしょう。
イスラム教では厳格なルールを信者に課していますが、重病人は免除されるなど、柔軟な部分があります。
アッラー/イスラム教の優しさ
イスラム教における慈悲深さ・優しさは他には下記のような例を挙げられます。
- 貧乏人にやさしい:貧しい者は信仰のために無茶な出費をしなくてもいい。また保護される。
- 未亡人にやさしい:未亡人の財産を守れるようになっている。
- 共同体を大切にする:仲間同士での集まりを重視する。
- 戒律を破っても、努力すれば許される:戒律を破ってしまったあとの挽回方法などがある。
アッラーとヤハウェとゴッドの違い?
先ほどイスラム教・ユダヤ教・キリスト教の神さまは同じ存在を指していると説明しました。ただし、各宗教における神さまの特徴やイメージは以下のように少しずつ違ってきます。
・アッラー(イスラム教):慈悲を強調。苦しみや過ちがあるのは人が不完全な存在だからであり、しかたがない。とにかくイスラム教を守って生活するのがベストだというスタンス。開祖ムハンマドは信仰の対象ではない。
・ヤハウェ(ユダヤ教):厳しさと慈悲をあわせ持ち、人類を罰する要素も強い。ヤハウェの語源は奴隷の支配者という側面をもつ。
・ゴッド(キリスト教):慈悲を強調。苦しみを与えるのは悪魔に任せている。開祖イエス・キリストを重要視し、神と同一視もする。
アッラー/イスラム教が許さないこと
多神教への崇拝はアッラー/イスラム教では許されない行為となります。
また偶像崇拝も否定されています。
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アッラーには形がない
アッラーは全知全能であり、世界のどこにでも同時に存在することが可能です。
形のない魂だけの存在であるため、いつでもどこでも何人にでも関与する力があるとされています。
アッラーの美称は99も存在する
アッラーには99もの美称があります。
ムハンマドの言行録のなかに、その名前は実際に99の美称が表記されています。
例えば「偉大なる者」や「真実」、「保証人」、「全知全能」、「常に与える」、「絶対的に正しき者」など、数々の名前があります。
意外性を感じる美称とすれば、「小さな親切」、「苦悩する者/害を与える者」などもあります。
イスラム教徒の修行の一つとして、この99の名前を覚えることが含まれています。
また、それら99の名前以外にも、「神の最も偉大な名前」として「イスムルアジム」という名前があると伝えられています。
99もの美称がある理由
アッラーに無数の名前がある理由は、アッラーの持っている偉大さを、多くの方向から表現しているためです。
強く、やさしく、慈悲深いなどの、数多くの美徳から評価することで、全知全能であるアッラーを表現していったわけです。
これら99の美称の暗唱が推奨される理由は、それをすることでより正しくアッラーの偉大さを理解できるようになるからです。
まとめ
- イスラム教の神さまはアッラー
- イスラム教とユダヤ教とキリスト教の神さまは同じ存在だが、呼び方が違う
- アッラーの意味はアラビア語で「神」
- 「アッラーアクバル」は「神は偉大なり」という意味
- アッラーは慈悲深いが、多神教と偶像崇拝が嫌い
- アッラーには99もの美称があり、100番目の名前「イスムルアジム」もある
- アッラーは全知全能の唯一神
イスラム教の神さまのことであるアッラーには、多神教の世界観をもつ日本人からすれば理解しにくい使い方を感じもします。
マレーシアではイスラム教徒以外がアッラーという言葉を使うのを禁止した法律もあります。
神さまの名前はみだりに呼ぶことは許しがたいものとされているためです。
イスラム教はシステマティックで、複雑さを持った宗教でもあります。
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