カラチャイ湖はチェルノブイリよりやばい?【超危険】

カラチャイ湖

世界には行くだけで命が危険にさらされる場所がいくつか存在します。

今回ご紹介する湖もそんな危険な場所のひとつです。

その湖が危険な理由は、人体に致命的なレベルの放射線を放つ廃棄物が大量にあるからになります。

世界屈指の危険地帯であるロシアの「カラチャイ湖」とは、はたしてどんなところなのでしょうか?

その歴史も含めて解説していきます。

世界で一番危険な湖:カラチャイ湖

カラチャイ湖の場所と大きさ

カラチャイ湖があるのはロシアのウラル地方です。現在は上図のように埋め立てられています。

ウラル山脈南方に位置するこの湖には大量の放射性物質が存在し、世界屈指の汚染された地域となっています。

カラチャイ湖の元々の大きさは0.51平方キロメートルです。東京ドーム10個分ぐらいの大きさですね。

それほど大きな湖ではありませんが、放射性物質であふれ返っています

カラチャイ湖の放射性物質の原因

マヤークの場所
核分裂性物質貯蔵施設(Fissile Material Sorage Facility)がカラチャイ湖の北西に位置している。(出典:wikipedia

カラチャイ湖には大量の放射性物質がある理由は長年にわたって放射性物質が廃棄されてきたからになります。

カラチャイ湖の上流には「マヤーク(Mayak)」という核技術施設があるのです。

マヤークは1948年に誕生したロシア最大の核技術施設であり、医療用の放射性物質、軍事用プルトニウム、原子力発電用の放射性燃料などが作られています。

設立されて以降、大量の放射性物質が生産され、その廃棄物がカラチャイ湖に流入していました。

マヤークにおける放射性物質の管理

マヤーク核技術施設
マヤーク核技術施設(出典:wikipedia

1948年当時のロシア=ソビエト連邦では放射性物質の危険性がよく分かっていなかったこともあり、その扱いはかなりずさんなものです。

原子炉の冷却に使う水を近くの川や湖から直接取り入れ、またそこに流してもいました。

つまりマヤーク周辺の川や湖は原子炉と「直接的につながっていた」のです。

原子炉を冷ました水が川や湖を循環していたために、その水は高熱となります。

そのためマヤーク周辺の川や湖は「熱い川」「イレンコの熱い湖」と呼ばれているのです。

なお、カラチャイ湖は小さすぎたために原子炉の冷却装置として使われず、ゴミ捨て場として選ばれます。

カラチャイ湖にはマヤークから出た大量の放射性物質のゴミが流れ込み、高度な汚染が発生してしまったのです。

マヤークが放射性物質をばらまいた理由

マヤークはどうして汚染を広げていたのでしょうか?

放射性物質の危険性を過小評価していたことに加えて、マヤークの存在を隠したかったという理由もありました。

第二次世界大戦後にソビエト連邦とアメリカは冷戦状態に突入します。

核兵器の材料となるプルトニウムを作っていたマヤークは、アメリカのスパイに場所を特定されないように工夫をしたのです。

どんなことをしている施設なのかを徹底的に秘密にして、さらに核の研究をしている施設を特定されないように、あえて設備を分散させています。

その結果としてマヤークの核施設はあちこちに分散して建てられ、それらを冷却するための河川も広大な範囲が必要とされました。

そして汚染もまた広範囲に及ぶようになったのです。

近隣の村や畑などを巻き込むような形となり、マヤークは長年稼働を続けるにつれて周辺に住む人々へ深刻な健康被害を与えるようになります。

カラチャイ湖に1時間いると死ぬ

マヤーク設立当初はカラチャイ湖には高濃度の放射性物質まで捨てられています。

やがて住民たちの健康被害が発生したこともあり、放射性物質に対する危険性も認識されていったのです。

その結果、あまりに高濃度の放射性物質を流すことは禁止されました。

しかし中程度や軽度の放射性物質については、それから何十年も規制されることはなくカラチャイ湖に捨てられ続けます。

やがて小さなカラチャイ湖は核のゴミでいっぱいの状態となってしまったのです。

湖に注ぎ込む川の近くなどの汚染が強い場所にいれば1時間で致死量の放射線を浴びてしまうほどの汚染になります。

マヤークで作られた無数の放射性物質が混ざりながら沈殿しているため、とくに湖底の汚染は深刻なものになったのです。

カラチャイ湖の奇形の魚

カラチャイ湖の奇形の魚
カラチャイ湖の奇形の魚(出典:Sometimes Interesting

放射性物質による深刻な汚染の結果、湖とその周辺に住む生物の遺伝子が損傷を受けています。

その結果として通常よりもはるかに高い確率で突然変異が起きているのです。

カラチャイ湖の湖底に卵を生む魚などは、発生の段階で遺伝子が壊れ、歯の位置や骨格の異常などが増えていきます。

魚だけでなく、周辺の昆虫や植物、果ては人間にまで遺伝子の損傷が見られ、奇形の発生率が高まっているのです。

カラチャイ湖の危険性が高まる経緯

マヤークの施設が周辺の環境を汚染する

マヤークでは十基もの原子炉と、原子炉から作られた放射性物質を加工するための処理場などの施設が数多く作られます。

これらから出た危険な廃棄物をカラチャイ湖は受け入れていたのです。

当初の計画ではカラチャイ湖にしばらく保存したあとで回収する予定でした。

しかし、あまりにも深刻な汚染になったため回収不能となり、その計画も放棄されます。

廃棄された放射性物質のなかには半減期(出る放射線が半分になるまでの期間)が数十年はかかるものも多くあったのです。

放射線が弱まるペース以上に、蓄積される廃棄物の方が圧倒的に多いため、マヤークが出来てから汚染は強まるばかりでした。

カラチャイ湖を含めて、多くの汚染された川や湖は農業にも生活用水にも利用されています。

そのため住民は体の外から放射線を浴びるだけでなく、飲食物からの被害も受けたのです。

つまり、内部被ばくと外部被ばくが同時に進行していきます。

マヤーク周辺住民の筋肉、臓器、骨髄に多くの放射性物質が沈着し、さまざまな健康被害を生むことになるのです。

ウラル核惨事:福島原発事故に次ぐ汚染

1957年9月29日、高濃度の放射性物質をため込んでいた貯蔵タンクの冷却装置が故障します。

放射性物質は常に冷やさなければ高温になってしまうのです。

故障は直らず、最終的に貯蔵タンクは爆発事故を起こします。

周辺に高濃度かつ大量の放射性物質が飛び散るという事故になったのです。

1957年の事故はキシュテム事故と呼ばれ、チェルノブイリ原発事故や福島原発事故に次ぐ量の汚染が起きています。

爆発により上空高くに吹き飛んだのは、プルトニウム、セシウム、ストロンチウムなどです。

この放射性物質は風に乗って数十キロ先まで流されていき、それらを浴びた人々は47万人以上と考えられています。

一部の放射性物質の種類によれば、福島やチェルノブイリを超えるとも考えられているのです。

なおマヤークでは少なくとも35回ほどの重大な事故が発生してきました。

施設の爆発や、臨界事故による作業員の被ばくが繰り返されているのです。

2017年にも放射線の量がヨーロッパで上昇しており、これはマヤークから漏れた放射性物質の影響と考えられています。

事故のたびに周辺にも放射性物質が飛び散っていったのです。

カラチャイ湖から放射性物質が飛散する

1967年には干ばつが発生します。

小さな湖であったカラチャイ湖も干上がり、放射性物質のゴミが沈殿している湖底が外気に露出してしまったのです。

乾燥した湖底からは風に吹かれるたびに、危険な放射性物質が舞いあがるようになります。

それらは近隣住民に降りかかり、およそ50万人に影響を与えたのです。

カラチャイ湖の周辺では、癌の発症率が21%増え、先天性欠損症が25%増加、白血病の発生は41%も上昇しています。

慢性疲労、体の痛み、不妊、不眠、体重減少、高血圧の増加なども含め、地元住民の65%が何等かの健康被害を受けているのです。

深刻な被害に対応するために、カラチャイ湖は埋め立てられることになったのです。

現在のカラチャイ湖

カラチャイ湖はセメント(コンクリート)で埋め立てられている

カラチャイ湖をセメント(コンクリート)で埋め立てている
カラチャイ湖の埋め立て作業

カラチャイ湖の湖底には危険な放射性物質が沈殿しています。

その厚みは3.4メートルほどにもなるのです。

1970年ごろから埋め立ては開始されています。

岩と特殊な加工が施されたブロック、そして大量のコンクリートでカラチャイ湖を少しずつ埋めていったのです。

正確な計画と実行の状況は不明ですが、研究者の証言によれば1970年以降も低濃度の放射性物質は川に流されてカラチャイ湖に流れ込んでいます。

1990年の時点では最も深刻な汚染があった場所では60分(一説では30分とも)で致死量にいたるほどの放射線が観測されているのです。

カラチャイ湖を汚染されていない水で薄めるなどの除染作業を行いつつ、工事は時間をかけて行われます。

工事が完了したのは2016年の12月になるため、40年以上の作業期間がかかったのです。

今のカラチャイ湖は安全なのか?

カラチャイ湖は完全に埋め立てられているため、放射性物質がここに流れ込むことはありません。

しかしこれまでに流れ込んだ放射性物質は回収されてはいないのです。

そのため地下水に溶けた放射性物質がゆっくりと広がるリスクがあります。

年間60メートル~80メートルずつ、汚染された地下水は広がっているのではないかとも考えられているのです。

生活用水としても使われている川や湖に地下の汚染水が到達すれば、大きな健康被害となりかねません。

そのため半永久的に監視し続けることが重要です。

また、この施設の寿命は100年ともされているため、100年後には再び工事が必要になります。

カラチャイ湖の現在の状態は、地上近くに核のゴミを埋めただけの「核廃棄物貯蔵施設」なのです。

まとめ

  • カラチャイ湖はロシアにある
  • カラチャイ湖はマヤークから出る放射性物質のゴミ捨て場として使用されてきた
  • カラチャイ湖には一時間で致死量に値するほどの放射線が観測されている
  • マヤークは数多くの事故を起こしてきた
  • 1957年にはチェルノブイリや福島に次ぐレベルの汚染事故が起きた
  • 1967年には干ばつのせいで干上がったカラチャイ湖から大量の放射性物質が飛散する
  • カラチャイ湖の周辺住民の65%以上に放射線による症状が出ている
  • カラチャイ湖周辺では魚や人間など、奇形が生まれやすくなっている
  • カラチャイ湖は40年かけてようやく埋め立てた
  • カラチャイ湖の石棺の寿命は100年

カラチャイ湖はマヤークという核技術施設群からの廃棄物で汚染されています。

マヤークは現在も運転をつづけており、世界有数の放射性物質の供給源です。

核燃料や医療用の物質など現代の生活を支えるための必需品を作っています。

一部の素材では世界のトップシェアを誇る大工場になり、平和な利用も多く閉鎖すれば世界中が困るような工場です。

核技術は人類を支えている一方で、深刻な汚染ももたらします。

カラチャイ湖のような半永久的に監視が必要な貯蔵施設の根本的な解決策は、今のところありません。

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