メソポタミア文明には農耕技術や高度な数学など、現代においても直接的に使われている発明があります。
そんなメソポタミア文明にも宗教があり、神々がいました。
メソポタミア宗教は多神教であり、代表的な神々についてまとめたものを「アヌンナキ」と石板に記していたのです。
今回はメソポタミア神話の神々、アヌンナキについてご紹介していきます。
アヌンナキとメソポタミアの神々
アヌンナキはメソポタミアの神々のこと
古代のメソポタミア文明に広がっていたのは都市国家(としこっか)というスタイルです。
有力な都市がいくつもあり、それぞれの都市が独自の神を祀っています。
その時代においては神官たちが政治的な支配者も兼任していました。
やがて多くの都市が連合を結ぶようになると「王さま」が現れて、都市国家の盟主として君臨するようになったのです。
メソポタミアの神々とは、それぞれの都市が祀っていた固有の神もしくは複数の都市が祀っていた有力な神のことになります。
数学的な考え方が発達していたメソポタミアでは60進法が使われていましたが、メソポタミアの神々の数は60かける60の、3600人いたと考えられているのです。
実際に3600いたというよりも、日本の「八百万の神々」と同じように、比喩としての表現であったと思われます(とはいえ、その実数は2100の神々がいたともされます)。
とにかくメソポタミアの神々は無数にいたわけですが、この神々の集まりのことを「アヌンナキ」と表現していたのです。
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「アヌンナキ」の意味や由来は?
アヌンナキは、最高神「アヌ」とその配偶者である「キ」(あるいは他の女神たち)の子供のことです。
アヌは全ての神の創造者であり、アヌンナキは「全ての神々の集まり」のことになります。
時代や国によってこの構成は多少は変わっていきますが、最高神である天空の神と、その妻であり大地あるいは冥界の女神たちの子であることが大半です。
またアヌンナキは「アヌンナ/主要な上位の神々」と、「イギギ/下位の神々」を合わせた呼び名になります。
アヌンナキが時代によって構成が変わるのは、都市国家であるメソポタミアの神々は有力な都市が変わる度に、神々の力関係も変わったからです。
どの都市が力を持っているかにより、神話の記述も変わっていったからだと考えられています。
たとえば最高神であるはずのアヌでさえ、その地位を奪われることもあるのです。
シュメールの神話とアッカドの神話、バビロニアの神話で神の地位や名前さえも変わります。
メソポタミアの神々の隆盛は、その神を崇拝している都市の実力を強く反映していたものなのです。
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アヌンナキの神々
アヌンナキの主要なメンバー=メソポタミアの著名な神々には以下のものがあります。
- アヌ:天空神でありシュメール神話では名実ともに最高の権威をもつ神。より古代の最高神の息子でもある。
- キ:アヌの妹神であり大地や冥界の神。※アヌ=天空神の配偶者は神話によって変わる。
- エンリル:アヌの子で大気の神であり、最強の神。エンリルが大地と天を分けた。事実上の最高神になる。性格が悪く、人類に厳しく、神にも戦いを挑む。二つの神の死体から採れた血を使い、人類を創造した。
- エンキ:エンリルの腹違いの弟神。淡水・知恵・魔術を司る錬金術師でエンリルに負けた。やられ役の神々で、イナンナに権威を奪われたともされる。エンリルに命じられて、粘土から人類を創造する。
- イナンナ:アヌの娘。愛、戦い、豊穣、美しさの女神。別名はイシュタル。エンキの紋章を奪う、冥界で死ぬが蘇る、英雄ギルガメッシュを誘惑するなど、多くの伝説を残す。伝説によっては未熟な人物の場合もある。
アヌンナキの神々による人類の創造
アヌンナキの会合で、下位の神々がストライキを起こしたときに人類の創造が行われたのです。
人類を創造した目的は「神々が働かなくて済むように」というものになります。
エンリルもしくは弟神のエンキにより作られていますが、神話によって記述が異なる部分があるのです。
どちらにせよメソポタミアの神話においては、人間は神々の労働力になります。
アヌンナキとヤハウェ
メソポタミア神話の影響をユダヤ教は強く受けた?
メソポタミアにバビロニア帝国が出来た時代では、ユダヤ人たちがバビロニアに連れてこられています。
バビロンの捕囚という時代であり、このときにメソポタミア神話の影響がユダヤ人たちに影響を与えていたとも考えられているのです。
またメソポタミアにユダヤ人グループは古くから住んでいたため、ユダヤ人の神話とメソポタミア神話は類似点があります。
メソポタミアの宗教そのものは滅びてしまいましたが、メソポタミアの神話の一部は他の地域の宗教や神として伝わることになったのです。
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アヌンナキたちの神話とユダヤ教の類似点
アヌンナキたちの物語と聖書の記述やユダヤ人の伝承には多くの類似点があります。
・洪水神話:
エンリルが異民族などに罰を与えるため大洪水を起こしています。
メソポタミア地方はチグリス川とユーフラテス川に挟まれているため、それらが氾濫を起こせばいくつもの都市が滅ぶような大災害になったため、洪水神話が生まれたのです。
旧約聖書では大洪水で人類を滅ぼす「ノアの箱舟」と関連します。
・モーゼの十戒とメソポタミアの法律の酷似:
神ヤハウェからモーゼを通じてユダヤ教徒たちに与えられた十戒は、メソポタミアの法律と共通点が多く見つかっているのです。
メソポタミアの文化がユダヤ人たちに受け継がれ、ユダヤ教を成立するときの要素として使われたとも考えられています。
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・罰を与える神:
エンリルなどは人間に罰を与えることも多い神です。
慈悲や恵みだけを与えるのではなく、逆らう者や敵だと考えた者に攻撃的になるところは、旧約聖書の神であるヤハウェと同じところがあります。
・エデンの園とリリス:
アヌンナキの一員であるイナンナは楽園(エデンの園)の管理者とされています。
リリスというヘビが楽園の聖なる生命の木に巣食っていたところを、イナンナは自分の兄弟神あるいは英雄であるギルガメシュに退治させているのです。
旧約聖書のエデンの園や、知恵の木の実、生命の木の実などとのエピソードと類似点があります。
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・リリス:
ユダヤ神話などにおいては、全てのユダヤ人の祖であるアダムの配偶者としてイヴよりも先にリリスという奔放な女性がいたとされます。
メソポタミア神話ではリリスは蛇の姿をもつ妖怪、あるいは淫乱な魔女などとして伝わり、バビロンの捕囚時にユダヤ人神話に影響を与えたのではないかという説があるのです。
・神話の記述方式:
メソポタミアの神話の記述方法は、旧約聖書の記述のスタイルと類似点が多くあります。
・旧約聖書に出て来る都市:
旧約聖書に登場する古代の都市は、わずかな例外を除いて古代のメソポタミア地方に実在していた都市なのです。
旧約聖書の伝説的な都市は、アヌンナキを信仰していた都市になります。
ヤハウェを作るときの元ネタがアヌンナキの神話?
バビロンの捕囚時にユダヤ教の完成は進んだとされています。
当地の神話や伝説がユダヤ教にフィードバックされることで、旧約聖書のエピソードや神ヤハウェのキャラクターが決まっていったのかもしれません。
メソポタミアの宗教は途絶えているため、バビロニアなどの遺跡から見つかった石板などを頼りに解読することしかできないため、その全容は把握出来てはいないものです。
もしかすると失われたメソポタミアの神話や伝承には、より旧約聖書に似た描写のものがあったのかもしれません。
アヌンナキが高度な知識を人類に与えた?
アヌンナキたちの役割
アヌンナキたちは都市の神ですが、それぞれに多くの役割を持っています。
エンキなどは知識の神として多くの発明を人類に与えたともされ、最高神エンリルは嵐を司る恐怖の神であり、イナンナは愛と母性の神です。
神話上では、これらの神々たちは人類に大きな恩恵を与え、技術や知識の生みの親であるとも伝わります。
シュメール人とバビロニア数学
シュメール人は60進法などを発明することで、現代の私たちも用いる60秒が1分、60分が1時間であるなど時間の概念を与えてくれたのです。
メソポタミアの数学はシュメールで盛んとなり、バビロニアの時代に最も発達したと考えられています。
数千もの粘土板が発掘され、そのなかには「教師から生徒への数学の問題」というものまで含まれているのです。
また4700年ほど前から「そろばん」の原形であるアバカスをメソポタミアでは使用していたと考えられています。
農耕技術や高度な法律
乾燥地帯であるメソポタミア地方を豊かな国家にした灌漑農業の発明、車輪の使用、高度な天体観測、さらには事細かな法律や金融の仕組みまでメソポタミア文明は発明しています。
世界最古級のワインの醸成場の痕跡などまであるのです。
アヌンナキが発明をくれたのかは不明ですが、メソポタミアの文明はそう思いたくなるほど高度な発達をしていました。
古代エジプトやインダス川の文明とも交流を行い、文化、経済、技術などの知識などを高めていたようです。
そのためメソポタミア地方は「文明のゆりかご」と呼ばれ、この土地で作られた宗教や技術は幅広い土地に広がり、古代世界に大きな発展をもたらしていきます。
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考古学者ゼカリア・シッチンの主張
古代宇宙飛行士説を作った人物
正統な学者たちからは一切認められてはいませんが、ゼカリア・シッチン(Zecharia Sitchin)を始め多くの学者や作家たちが「古代宇宙飛行士説」を作り上げています。
この説によれば、「古代文明は異星人から与えられたもの」ということになるのです。
正統な学説と比べれば、もちろんユニーク過ぎるものになりますが、説としては興味深いものになります。
メソポタミアの言語の解読は進んでいるため、現在では否定されている部分も多くありますが、シッチンは独自の翻訳でシュメールの石板などに書かれている物語を広めました。
シッチンが語るには、シュメールの古代文明は異星人から技術や知識が与えられたものだと主張しているのです。
アヌンナキはニビル星(惑星X)から来た種族?
シッチンの主張によれば、古代シュメール人の天体観測技術は肉眼では見えない星を見つけていたため、それは異星人から教えてもらったのであるとなります。
そんな星の中にシュメールの神々であるアヌンナキたちの故郷「ニビル星」があると主張したのです。
シッチンの主張によれば、アヌンナキたちは1万年の寿命を持っていたニビル星人の使者であり、1000年の寿命を持っていて、人類を100年の寿命がある奴隷として製造したのです。
宇宙から来た異星人の支配者たちは、労働力として人類を作り上げたと主張しています。
なお、シッチンが主張するような事実があったかは不明です。
少なくとも考古学が進んだ現代においては、シッチンの主張するようにニビル星という何かをシュメール人が認識していることを示す文章は発見されていません。
メソポタミアで特別なエピソードが奉げられている星は、金星、火星、木星、太陽と月などになります。
未知の惑星にまつわる重要なエピソードや、それに関連付けされた神は発見されてはいないのです。
ストーンヘンジやピラミッドは全て異星人の作品?
古代宇宙飛行士説においては、イギリスにあるストーンヘンジや、エジプトにあるピラミッド、そして南米にあるピラミッド、メソポタミアのジッグラトなどは、全て高度な科学力を持つ異星人の作品と主張しているのです。
どうしてかというと、「そうじゃないとこんなもの作れないだろうから」というのが古代宇宙飛行士説の一般的な主張になります。
異星人からの高度な技術提供がなければ、巨大な石の構造物は作れないという前提ですが、現在のところ現代の技術を凌駕する高度な科学技術が使用された痕跡はありません。
むしろ建材となる巨石を動かすためのアナログな方法について記された文章や、壁画などは見つかっています。
エジプトでは巨石の運搬時には道へ油や水をまくことで摩擦を減らし、メソポタミアでは丸太などを巨石の下に設置することで運びやすくしていたようです。
摩擦について初めて研究して記述を残した人物はルネサンス期のレオナルドダビンチまで待たねばなりません。
また現代でも摩擦についての研究が進むことは、世界で年間あたり数十兆円単位のコストの削減につながるとも考えられている重要な分野です。
摩擦という中世まで研究者が現れなかった分野に、古代人たちが注目していることは、より多くの労働力の確保に対して貪欲であったことの証なのかもしれません。
まとめ
- アヌンナキとはメソポタミアの神々のこと
- アヌンナキは天空神アヌと大地の女神キの子供たち
- アヌンナキは上位グループと下位グループに分かれる
- 下位グループの神がストライキを起こしたため、労働力として神々は人類を作った
- メソポタミアの神々は時代によって地位や立場が変動する
- メソポタミアの神々はそれを祀る都市の立場で評価が変わった
- アヌンナキの神話とヤハウェや旧約聖書のエピソードには類似点がある
- メソポタミアには高度な学問や技術があった
- 科学的な根拠はないがアヌンナキは異星人であると主張した学者がいる
古代宇宙飛行士説はエセ科学として有名であり、世界の不思議はすべて利用していきます。
その説においては、アインシュタインの研究成果も宇宙から届いた異星人からの贈り物になり、あらゆる情報機関は異星人と接触しているももの、その存在を隠しているそうです。
もちろん正統派の学問からは拒絶されている説ですが、面白さはあります。
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