多くの個性的な神々が存在しているヒンドゥー教には、サラスヴァティーという女神がいます。
サラスヴァティーという名では、日本人にとっては耳慣れない名前ですが、七福神の一柱である弁財天は有名です。
この二人の女神たちは、じつは同じ存在になります。
今回は、インドのヒンドゥー教の美しい女神、サラスヴァティーがどんな女神なのかを解説していきます。
女神サラスヴァティーの多彩な能力
サラスヴァティーは水の女神
サラスヴァティーは豊穣と水を司る女神です。
聖なる川、サラスヴァティー川の化身とされており、古代インドの聖典であるリグ・ヴェーダにおいても賛美の歌が捧げられています。
サラスヴァティー川は、紀元前900~紀元前500年のあいだに編纂された、ブラーフマナという書物において、すでに干上がってしまったとの記述があるのです。
あるいはサラスヴァティー川とは、地下を走る川のことであるともされています。
どちらが答えだったとしても、宗教的に重要な位置づけをされることが多いのがサラスヴァティー川であり、この川は古代インダス文明の遺跡群の中央を流れていたとも考えられています。
そのことから、一部ではインダス文明のことを、インダス・サラスヴァティー文明とも呼ばれているのです。
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サラスヴァティーはとても美しい女神
サラスヴァティーは、白い肌をしており、額には三日月の印を付けた四本腕の女神です。
サラスヴァティーは4つの腕のうちの2つで弦楽器を持ち、残りの腕には聖典であるヴェーダと、数珠を持っています。
創造神であるブラフマーから生み出された存在ですが、サラスヴァティーのあまりの美しさにブラフマーは彼女を妻にしようと考えます。
つまり、娘であるサラスヴァティーを、ブラフマーは娶ろうとしたわけです。
サラスヴァティーはその結婚を拒み、逃げ出しますが、ブラフマーはサラスヴァティーを常に見続けたいがために、自らの顔を5つに増やしたのです。
そこまでされたら逃れられないとあきらめたサラスヴァティーは、逃げることをあきらめ、ブラフマーの妻となることを決めます。
そしてサラスヴァティーとブラフマーのあいだに、人類の始祖であるマヌが生まれることとなったのです。
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サラスヴァティーは「流れるもの」の女神
川の化身であるサラスヴァティーは、「流れるもの」の象徴です。
具体的に言えば、言葉や韻律、ヴェーダの賛美歌や知識というものが「流れるもの」には含まれており、サラスヴァティーはそれら全ての女神でもあります。
サラスヴァティーは言語まで作った女神でもあり、本当に多くの才能を持った女神なのです。
サラスヴァティーの能力
最高神を虜にするほどの美貌を持ち、音楽、言語、知識を司る水の女神、それがサラスヴァティーになります。
インドの神話では、長い歴史を持つ神さまほど、他の神々や伝説と合一されていくため、サラスヴァティーは、かなり古くからある女神なのだと考えられているのです。
広大な範囲で崇拝されており、最高の女神とも呼ばれることがあります。
サラスヴァティーと弁財天(弁才天、弁天)
サラスヴァティーは七福神の弁財天のモデル
多くの才能を持つサラスヴァティーは、インドの宗教である仏教にも組み込まれることになります。
仏教においては、サラスヴァティーは仏教の守護神の一柱になったのです。
それこそが、弁財天になります。
サラスヴァティーと弁財天の共通点と相違点
弁財天は音楽や、学問や芸術の神であるという点で、サラスヴァティーと共通する能力を持っています。
しかし、弁財天は、サラスヴァティーとは異なる点もあるのです。
七福神として、福を授ける神でもあります。
じつは日本の弁財天は、愛と富と繁栄の女神であるラクシュミ(吉祥天)とも一体化しているため、福の神の性質が強化されているのです。
サラスヴァティーとラクシュミなどが合わさった女神が弁財天(弁才天、弁天)
サラスヴァティーが仏教に組み込まれてから、西から東へと伝わってくる過程で、ラクシュミや別の神を取り込んでいきます。
中国では武器を持つ八本腕の戦う女神にもなり、日本では吉祥天ことラクシュミ、そして水と子守の女神でもある市杵嶋姫(イツキシマヒメ/イチキシマヒメ)とも合一していったのです。
さまざまな女神とその伝承や役割が混じっていくことで、サラスヴァティーの性格は変わります。
当初のヒンドゥー教の学問と芸術と水の女神から、仏教の守護神という戦闘的な形になり、やがて弁財天という財宝神の側面を強く帯びていきます。
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七福神となった弁財天のご利益
弁財天は、金運、財運、音楽、芸能、学問、縁結び(縁切りも含む)、出世、勝運・武運長久、国家鎮護のご利益をもたらしてくれる福の神です。
多くの女神が合一されていった結果というような、多面的なご利益になっています。
ちなみに、弁財天と弁才天の表記がありますが、どちらも正しい呼び名です。
弁才天のほうが、言葉の神という側面が強いので、よりサラスヴァティーには近い印象を受けますが、もはや一般的には福の神の側面が強いため、弁財天という名前も相応しいのです。
どちらも正しく、弁天とも短く呼ばれ、これもまた正しい呼び名になります。
サラスヴァティーに関連する神々
サラスヴァティーとラクシュミとパールヴァティ
この三人の女神たちは、それぞれがブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァと、三人の最高神たちの妻となります。
三人の最高神と、その妻の女神たちという形であり、それぞれが、創世、維持、破壊、を司っている夫婦神になるのです。
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サラスヴァティーの持っている楽器を作ったのは破壊神シヴァ
サラスヴァティーの持っている楽器「ヴィーナ」は、二個のカボチャをくり抜いて、竹竿につなぎ、動物の腸から作り出した弦によって組み上げられています。
このヴィーナが、日本に伝わると琵琶(びわ)になっていき、弁財天は琵琶を持っているのです。
ヴィーナは古代インド音楽における、弦楽器の総称なのですが、サラスヴァティーの使っていたヴィーナは白鳥のように美しい、あるいは孔雀のように精緻な装飾が施されているとも伝わっています。
サラスヴァティーとヴィシュヌは元夫婦?
ブラフマーの娘であり妻となったサラスヴァティーですが、一部の伝説によると元々は維持神ヴィシュヌの妻であったという説もあります。
ヴィシュヌは他の神々とケンカばかりするサラスヴァティーに愛想をつかして、ブラフマーに譲ったとも伝わっているのです。
サラスヴァティーは攻撃的な性格をしていた、という評価を受ける場合もあるようです。
サラスヴァティーの乗り物は孔雀
サラスヴァティーは孔雀に乗って移動したり、孔雀を自分の周囲にはべらせていたりします。
美しく羽根を広げる孔雀は、昇華や真理の追究である錬金術の象徴であるとも考えられています。
ちなみに弁財天は白蛇を連れています。
まとめ
- サラスヴァティーはサラスヴァティー川の化身
- サラスヴァティーは美人
- サラスヴァティーはブラフマーの娘であり妻
- サラスヴァティーは川、芸術、学問、言語などの女神
- サラスヴァティーは弁財天
- 弁財天はサラスヴァティー以外の女神の性質も継いでいる
- サラスヴァティーはヒンドゥー教の三人の最高神とエピソードを持つ
ヒンドゥー教で最高の女神とも呼ばれるサラスヴァティーは、多彩な能力を持ち、その起源はかなり古い女神です。
我々、日本人にとっては七福神の弁財天として、身近さを覚える女神でもあり、古代インドから永い時間と広大な空間を移動しながら伝わったと思うと、感慨深い女神です。
今回の記事で、サラスヴァティーに興味を持たれた方は、他のヒンドゥーの神々を調べてみると、きっと面白い発見があります。
インドの神々は破天荒であり、とても個性的な神々がそろっているのです。
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