多神教である仏教には、仏と呼ばれる神々が無数に存在しています。
宗派によって重視している仏に違いがあったりはするのですが、この仏にもカテゴリーが存在しているのです。
釈迦如来と弥勒菩薩などでは、「如来」と「菩薩」という身分の違いがあります。
今回は、仏教の神、仏の階級である「菩薩」について解説していきます。
目次
菩薩という階級の意味
菩薩とは仏の階級の一つ
多神教である仏教は、多くの仏がいるのですが、まずは大きく二種類に分けることが理解の早道になります。
仏には最も偉い「如来」と、それ以下である「菩薩」がいるのです。
釈迦如来などは象徴的で分かりやすいものであり、仏教の開祖である釈迦を神格化したものになり、如来=いちばん偉い仏という理解しやすい存在になります。
また、如来のことを、より正確な意味での「仏」としていて、菩薩とは「修行者」という意味でもあるのです。
完成した菩薩は如来=「仏」であり、菩薩は如来=「仏」に至る前段階の修行者というカテゴリーに分類されています。
菩薩は如来より下位にあたる全ての仏
「仏」とは「真理を見つけて悟りを開いた存在」の総称であり、最も偉い「仏」は如来です。
そして、如来の下に位置するのが「菩薩」たちになります。
仏は52のレベルに分かれているのです。
仏教における仏の階級は、頂点の如来に、それ以下の51のレベルに所属する菩薩たちで構成されており、つまり仏の階級は52レベルあることになります。
菩薩や如来の違いは悟りのレベル
悟りには52のレベルがあるとされていて、52の「全て」の悟りを極めたのが如来という最高位の仏たちになります。
51~1レベルの悟りでは、如来とは呼ばれず菩薩になるわけです。
菩薩という言葉の意味
「菩薩」という言葉には、仏の階級としての菩薩ではなく、「悟り(菩提)を求めて修行する者たち」という意味もあります。
「修行の段階を表現するもの」であり、語源としては「生きている人」のことです。
しかし、事実上、信仰対象とされているので、他教でいうところの神に菩薩たちは準じています。
菩薩は仏教という多神教において、主要ではない神という地位のような存在です。
菩薩も本質的には仏として扱われて信仰を集めている、民衆的な守護神たちになります。
菩薩の種類は52種類ある
菩薩の階級の種類
- 妙覚:52の悟りを完全に開いている菩薩であり、菩薩では最高位。つまりは「如来」のこと。
- 等覚:51の悟りを開いている菩薩。菩薩の極意に達した階級。
- 十地:41~50の悟りを開いた菩薩。民衆に仏教を伝える。人を乗せる大地のごとし安定感を持つことが名前の由来。
- 十廻向:31~40の悟りを開いた菩薩。自利・利他の修行で得た力を人々へ施す。
- 十行:21~30の悟りを開いた菩薩。利他の修行のために、人々の救済に努める。
- 十住:11~20の悟りを開いた菩薩。仏教の法を知り、より安定した状態。
- 十信:1~10の悟りを開いた菩薩。仏教の法を信じて疑心の消えた状態。
なお、それぞれに異称もあり、妙覚(果)、等覚(因)、十地(因)、この因と果に含まれる上位レベルの菩薩を「聖」と言います。
十廻向(内凡/三賢)、十行(内凡/三賢)、十住(内凡/三賢)は三賢です。
なお、十信は(外凡)となり、十廻向~十信を総じて下位レベルの菩薩を「凡」と呼びます。
41以上の悟りを開いたら「聖」、40以下は「凡」ということです。
代表的な菩薩の種類
- 弥勒菩薩:釈迦の死後56億7000万年後に現れる予定の救世主的な菩薩。「未来仏」と言われる。「弥勒」の語源はミトラ教の「ミトラ」。
- 観音菩薩:「大慈大悲」を象徴、日本では現世利益追求と結びつけられる。千手観音、十一面観音などで有名。観音の種類は無数にある。
- 文殊菩薩:「智慧」の菩薩、釈迦並みに賢い。
- 普賢菩薩:「慈悲」を象徴、悟りを求める心の象徴、「減罪の利益」。
- 薬王菩薩:体を焼くと香のかおりがする菩薩、人々に薬を施した徳で菩薩になった。
- 薬上菩薩:薬王菩薩の兄弟、コンビで活躍していた。
- 地蔵菩薩:いまだに誕生していない救世主である弥勒の不在を助け、あらゆる世界で人を救う、「大地と子宮」の意味を持つ。日本では子供の守護神である。つまりは「お地蔵さま」。
- 虚空菩薩:記憶力に長けた菩薩、「虚空蔵/虚空の母胎」の意味、智慧・知識・記憶のご利益を持つ、密教の「胎蔵曼荼羅」の虚空蔵院の本尊。元来は地蔵と対を成す存在。
- 龍樹菩薩:大乗仏教の初期の指導者。
- 八幡大菩薩:仏教に入ったとされる日本の神々たちのこと。
菩薩以外の仏の種類
時代と共に増えつづける仏たち
多神教である仏教の頂点の神々が如来です。
ですが、仏教は多神教なため、最高位である如来も一人ではないのです。
各宗派への分離や時代の経過によって、如来たちも追加されていくことになっています。
ただし、よりオリジナルに近い上座部仏教においては「釈迦以外に仏なし」という考え方にもなっています。
上座部仏教では、菩薩にあたるような存在のことを「阿羅漢」と呼び、彼らは釈迦の教えにより解脱に至った聖者たちのことになるのです。
反面、大乗仏教における如来という最高神たちは、宗派の追加によって増加していったのです。
仏教は、そもそもが多神教であるため、いくらでも神の追加とローカライズが許された、寛容さを持っている宗教になります。
日本の神々でさえ、仏教では仏と呼ばれているのです。
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釈迦如来以外の最高位の菩薩である仏たち:如来の種類
開祖である釈迦を、最高位の如来という神に据えていることは理解しやすいものです。
しかし、仏教は学問と修行を尊び、多神教であることから、釈迦にもまた上位の存在を用意する場合もあります。
全ての仏教でそうというわけではなく、宗派により自分たちの信仰上、重要視する最高神も違っているという価値観からの判断であり、宗派により如来も複数いるわけなのです。
- 釈迦如来:上座部仏教では唯一の仏。仏教の開祖である釈迦の尊称、あるいは仏としての釈迦のこと。
- 阿弥陀如来:大乗仏教で作られた如来。宗派によれば釈迦如来の師匠であり、ときに釈迦より格上。宗派によればそうでもない。他の菩薩たちと同一視されることもある。
- 薬師如来:薬壺を持った如来。阿弥陀如来とは異なり、生きているあいだ、現世にやすらぎを与えてくれる如来。現世利益が特徴。密教では胎蔵大日如来と同体ともされる。
- 大日如来:密教の本尊、つまり密教においての最高神。密教では修行の果てに大日如来との一体化を目指す。
- 過去七仏:釈迦を含み、釈迦の前世である仏たちを含めた、七つの仏のこと。仏教誕生は釈迦一代の功績ではなく、釈迦の前世からの努力が累積した結果に誕生したと考えられている。
密教特有の如来の化身:明王
インドで後期の密教が作られる際には、イスラム教がインド密教の存続を危機的な状況に追い詰めていたのです。
そのためインド密教の後期では、攻撃的な仏が登場することになります。
敵を排除するという怒りをモチーフにしたのが、如来の化身である「明王」です。
また宗教的な人気が落ちていたため、ヒンドゥー教の神を倒したり改宗させて、密教に鞍替えさせたという形式を多く持ちます。
他宗教の神を圧倒するという、強さを感じさせるエピソードを作ることで、人気を得ようとしていたわけです。
つまり、明王は密教の神々になります。
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まとめ
- 菩薩とは如来でない仏
- 菩薩とは完全な悟りには至っていない修行者
- 菩薩は52レベルに分かれる
- 菩薩はたくさんいる
- 菩薩は上座部仏教では阿羅漢
- 如来も宗派の増加に伴い増えていった
- 明王は密教の神々
- 宗派により仏教の神々は扱いが多少は異なる
菩薩を始め、仏はたくさんいます。
ザックリとした理解を優先するときは、いちばん偉い仏さまが如来、それ以下が菩薩という考え方が手っ取り早いものです。
今回の記事で菩薩に興味を持たれたら、各菩薩を調べてみることもおすすめです。
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